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「ラザ君・・・?」

呼びかけても既に返事はなく。

村の長老があたしの肩に手をかける。

「残念だが・・・。」

「なんで・・・どうして・・・?やだよ・・・」

血だらけの姿のまま、それでもあたしは左腕で二本の剣を抱え

右手で彼の手を握り締めたまま。

膝に彼の頭を乗せたまま現実を受け入れられないままでいた。

何度も、何度も彼の名前を呼び続けていた。



やがて雨が降り出した所までは覚えている。

後ろで魔法の詠唱呪文が聞こえた。



多分、スリープの詠唱だったんだと思う。



気づけばあたしはベッドの上で。

ぼやけた頭でむき出しのまま椅子の上においてある

その二本の剣を見てただ、何も考えずにその剣を握り締めて

いつの間にか着替えされられていた白衣のまま、

裸足のまま、よろよろと外へと歩き出していた。



あのアーチの前で立ち止まる。

どのくらい眠っていたかは分からないけれど

彼の血はほとんど流されていて

あれは現実じゃなかったと、そう思えてきて。

でも彼の剣は今、あたしの手の中にある。

そして彼の姿はどこにもなくて、でもそんな現実

認めたくなくて。

あたしは、その剣先を無言のまま

雨の降り注ぐ空へと向けてそのまま、また、意識を失った。



次に目が覚めた時。

あたしは何故か監視されていた。

見覚えのあるセンティネルがドアの前に立っていて

静かにこう告げた。

「友人の遺体は神殿に安置してある。話せる島に連絡をとったが

彼は身寄りはないそうだね。」

と。

あたしは黙って頷くしかなかった。

彼の家族とか両親とか、そういうものの話を

思えば聞いた事は一度もなかった。

「・・・・会うかい?彼に。」

その言葉で少しだけ顔を上げて

・・・きっとひどい顔をしていただろう。

それでもあたしは頷いた。



雨は上がり、月の明るい夜の村をセンティネルさんの後をついて

神殿の中に入る。

通された奥の部屋には「彼」の遺体が静かに横たわっていた。

月明かりのわずかに入る程度の部屋の中では

ただ、いつもの様に眠っているようにしか見えなかった。

彼の首にそっと手を伸ばす。

冷え切ったその体からはいつものあの暖かさも

静かな音を刻む脈も、何も感じられなかった。



抱きつけば、戸惑いながらも受け入れてくれた。

不安で腕を掴めば笑いかけてくれた。

寂しくて手を握れば優しく握り返してくれた。

困っていれば「大丈夫」そう言ってくれた。



あたしが泣き出せば、いつも「よしよし」って笑って

頭を撫でてくれた。



いつも いつも いつも いつも



あたしは彼に救われてきた。

支えられてきた。

甘ったれで無鉄砲でわがままなあたしを


一度だって見捨てようとはしなかった。



だから守れるようになるって

いつか、あたしが助けられるようになるんだって



そう思って、スペルシンガーを目指してきたのに。

いつか、プロフィットになった彼と世界の広さを

見に行くんだって思ってたのに。



あたしは何ひとつ出来なかった。

一緒に戦う事すら出来なかった。



大切な「相方」そう思っていたのに

彼になにひとつしてはあげられなかった。

何よりも大事な

あたしの初めての「友達」だったのに。





「・・・大切な人だったんだろう?」

センティネルの言葉に頷く。

「・・・彼の分まで生きろ、そんな事を言えた義理ではないが

多分、彼も君が生きる事を望んでいる。」

その言葉に顔を上げる。

なぜ、そんなありふれた言葉をかけるのかと。

そんな事を言うくらいなら黙っていろと。



「彼はこう言っていたねその剣が自分の代わりに君を守ると。」

そういわれ、持ってきていた両手の剣を見る。

「それは『この剣が守り続けるから。生きて欲しい』そういう意味にはとれないか?」



その時はっきりと思い出した。

思い出したくなくて、受け入れたくなくて

逃げていた「あの時」の記憶を。



『その剣が、ボクの代わりに君を守るよ。』

そう言った彼の笑顔を。





「あたしには・・・。」

「ん?」

「あたしにはまだこれからどうしたらいいかなんて分からない。

ここまでラザ君と歩いてきたから。・・・でも。」



「これからもラザ君と歩いて行く、それだけは今、決めました。」



二本の剣を握り締めて、はっきりと言った。

いや、自分に誓ったという方が正しいだろう。



自分が生きる限り、彼の記憶と共に。

彼の剣と共に。

あたしは生き続けると。












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「おねえさまー、朝だよー♪」

いつもと変わらない朝。

同じ宿部屋に泊まっていたラズリの声で目を覚ます。

「昨日焼いておいたケーキ食べようよ・・・・ってお姉様?!」

あたしの顔を見ておたおたする妹に首を傾げる。

「ぇ・・どうかした?」

「なんで泣いてるの?!怖い夢でも見た?!」

そう言われ、自分の目元に手をやる。

その濡れた指先を見てさっきの夢の、あの痛みを思い出す。



「少し・・・悲しくて懐かしい夢を見ただけよ。」