過去と共にありし今
「・・・・ボクはもう守ってあげられないから」

                  (そんなの嫌だよ)
「・・・・これをボクだと思ってね」
                 (無理言わないでよ)

「・・・・ずっとこれでヨハネちゃんと戦った・・・いつもこれでヨハネちゃんを守ってた・・・」
         (あたしが守りたかった、君を守れる強さが欲しかった)



「・・・この剣が・・・・ボクの代わりに君を守るよ」


立ち尽くしたエルフの少女が虚ろな目で自分の両手を見つめる。


「『・・・・ボクの代わりに君を・・・・』」



「お姉さま!!!!!」
「うひゃぁつっ!」
突然かけられた声に少女は驚き、目の色を戻した。
「もう・・・何度も声かけたのに・・・グランドマスターが困ってたよ。」
「え・・・なんで?」
「エルブンナイトの証明書!忘れて出てきたでしょう?」
その言葉に姉と呼ばれた少女は『ぁ』という顔をする。
「転職試験受かっても証明書なきゃスキル教えてもらえないよ。」
「ぁー・・・あ〜・・・・忘れてた・・・・。というかよくあたしここにいるの分かったね?」
姉・・・風谷ヨハネは笑ってごまかしながら髪をかきあげる。
「妹ですから♪・・・っていうか気づくとお姉さまここにいるじゃん。」
苦笑しながら答えるヨハネの妹、風谷ラズリ。
「そか。ありがと。で、ラズ支度はもういいの?」
そう言いながらその手にもつ荷物を見やる。が、とうの本人ラズリは
自分の前髪をひっぱって見せる。
「荷支度よりこっちが問題。変なクセが取れないんだよね。せっかくの初めてギランに
出るっていうのに〜〜〜〜」
不機嫌な顔を見ながら苦笑する。
「ま、それじゃ証もらってきて行こうか。」
「はぁ〜い。あっちならいい美容室あるだろうし早めにストパーでもかけよー・・・」
風谷ヨハネ、17歳。エルブンナイト。
風谷ラズリ、15歳。エルブンスカウト。
二人がエルフ村を旅立つ朝、もう既に風はあの絶望の過去と今を繋げていた。


こうして全ては始まる。