翌朝、ラズリとお兄ちゃんと夕方合流する約束をしてからギランを出た。
晴れ渡った空を見ながらどうやって話をするか悩みつつ歩く。
キリちゃんと始めたINESSに当時から懐いていたお兄ちゃんが加わり、
その友人のくおん君とラズリが増えて。
今まで「勧誘」らしいことなんてした事なんてなかったから
妙に緊張してしまい、昨日は余り寝られなかったわけだが
明け方隣の部屋からのお兄ちゃんの部屋からの絶叫で問題なく予定時刻に
起きられたのが幸い(何があったのかは不明)。
 やがてディオンにつき、こんな時間からチラホラ出ている露店を軽く覗く。
「アクセもそろそろグレード上げないとだよなぁ・・・。」
そうつぶやきつつ顔を上げる。
村に彼女の姿はまだない。
・・・が、別の知り合いの姿を見つけてこちらに気づかない背中に飛びつく。
「くじらさまぁっおはよーーーー☆」
若干前のめりになった彼はまたお前かという顔でこちらを見る。
「ヨハネか。」
「テンション低いねぇ〜また徹夜〜?」
「おう。クルマクラハンしてた。」
そう言いながら見た先を見るとよく知っている顔がチラホラ。
「ヨハネおーっす。またくじらかよ・・・」
「族長おはよ〜」
そう言いながらくじらさまにひっついたままそこの盟主に手を振る。
島時代からの数少ない友人であるここの盟主、なべたけさんとはなんだかんだで
長い付き合いで。
くじらさまと知り合ったのは本当に偶然で、たまたま族長こと、
なべたけさんの血盟員だったコトもあり
渡辺族とは個人的にかなり仲良くさせてもらっていると思っている。・・・と。
「おーヨハネじゃんー。今日の下着の色は・・・」
と後ろからスカートのスソを掴まれ、それを叩き落とすと、
いつも通り腰のエルバソを抜き、相手の首元に交差させる。
「出たなセクハラ大魔王!!!!」
そう睨み付けるとこいつもまたいつも通り
全く気にした様子もなく両手をヒラヒラさせる。
「いーじゃん減るもんじゃなしー」
「減るからダメ!!!」
「つめてーなぁ昨日はあんなに激しかったのに・・・」
「昨日はギランの宿でふっつーーーに一人で寝てた!」
「照れちゃってカワイイ奴め〜」
「照れてない!!!そんな事実もない〜〜〜!!!!」
そう叫ぶと周りの視線に気づき
深くため息をついてから再びくじらさまにひっつく。
「なんだよ今日はくじらかぁ?」
そうセクハラ大魔王・・・セキタクさんに言われてプイと顔を横にふる。
「ボクは前からくじらさまに片想いINアデンです。」
そう言い切ると
「なんでだよー。俺にしとけよー。」
そう族長が言い出すが、思いっきり首を振る。
「ヤダ。」
そう、相変わらず無表情で無反応のくじらさまの背中に隠れる。
「なんでくじらなわけ?」
そうセキタクさんに聞かれ皮肉たっぷりで言い放つ。
「セキタクさんと違ってえっちっちーじゃないから!」
「なんだよーホントは好きなんだろ〜照れちゃって〜素直になれよ〜」
「・・・・どうやったらそういう思考にたどり着くのセキタクさん・・・。
くじらさま助けてよぉ・・・。」
そうひっついている対象の顔を上げるとウトウトしているのがよく見えた。
「・・・・・・・・・うぅ。」
半べそになるとこれもまたいつも通り族長の勧誘が始まる。
「ヨハネ〜うちのクランこいよー」
「ボク盟主だからヤダ。」
「じゃお前のクランごと吸収してやっから。」
「名前がダサイからヤダ。」
「くじらいるぞ〜?」
「・・・・・」
「タクもいるし。」
「絶対ヤダ。」
別にセキタクさんを本気で嫌ってたわけじゃないけど
(嫌いな人とは口きかないし)
このなぜかセクハラトークばっかりふってくるのに
対処に困ってたのは若干事実で。
・・・というかこの頃からの素朴な疑問として、
「なんでくじらさまとセキタクさん同じ血盟なんだろう」とかは
正直思っていた。
「くじらさまぁ〜今度遊ぼ〜デートしよ〜?」
そう、若干眠気の覚め始めたくじらさまにふるとボクを見下ろし
「デート?スノボでも行くか?」
そうたずねてきたが、ボクは満面の笑顔で返す。
「んーん。DVとかさ〜どっかつれてって〜」
「ペア狩りと言いなさい・・・・」
「二人でお出かけ=デート!」
「俺らは誘わないのかよ・・・・。」
横でつぶやく族長に視線を向ける。
「だって族長レベルアップのラスト3%
なんかいっつもボク一緒にいるじゃん・・・。」
「毎回眠い眠い言いながらお前いるよな・・・。」
「毎回あと3%付き合えって帰らせてくれないのは誰・・・。」
「そう言いながら付き合ってくれるって事は・・・・?」
「だーかーーらーーボクはくじらさまに片想い中!」
確かに族長はボクが島にいた頃からの友人だし付き合いは長いが
ぶっちゃけケンカも多いわけだし。とか思っているとふとくじらさまが口を開く。
「・・・・いつから好きなんですか。」
唐突な言葉に少しきょとんとしてから
「んーとクルマで初めて会った時〜。」
そう答えると相変わらずの無表情で
「一目ボレですか。」
そうタバコを出しながら言われて大きくうなずく。
「だってくじらさまって名前可愛いじゃん?鯨で様だよ??」
そう言うとくわえたタバコを落とされる。
「名前かよ・・・。」
「あとねぇ〜くじらさまは絶対ボクを恋愛対象にしなさそうだから〜。」
「は?」
その場にいた3人にクビを傾げられる。
「だーかーらー。ボクは片想いがしたいの。両想いより片想いの方が楽しいじゃん?」
「意味わかんねぇ・・・。」
「両想いは傷つくし、傷つけちゃうし、わがままになっちゃうから片想いがいいのでぇす。」
そう自慢げに言ってみたが、ものすごく哀れむ視線を向けられる。
「お前今までどんな恋愛してきてんだよ・・・。」
「ろくな男と付き合ってきてねーんだな・・・・可哀想に・・・。」
その態度にむっとしたが、そこでやっと本来の目的を思い出す。
「あ、っていうかみんなクルマにいたんでしょ?ティアって言葉片言のDWIZ見なかった?」
そのボクの質問に三人は誰だそれ?と返してきた。
「見てないかぁ・・・。ウィザ上下着てるから目立つと思ったんだけど・・・。」
「あ、女のDWIZ?」
そう心当たりがあるように言われてうなずく。
「見た?!」
「さっき俺ら帰る時にすれ違った奴かも。PT行くとこだったぽい。」
そう言われて少し考える。
「んじゃこのままこの辺ふらふらしてればみっかるかぁ・・・。」