月の光、悪夢にさえも祝福を
その3
「・・・・奥まで進む気じゃないでしょうね・・・まさか・・・・」
「何がだ?」
テーブルでほうじ茶を飲みつつ饅頭を食べていた手を止める。
「・ ・ ・ん?」
ハーディンの問いには答えず皿の下の紙に気づき手にとる。
「なんだ、お前まだ読んでいなかったのか?」
呆れたように言われ
「あー忘れてた。」
といいながら封を切る。
そしてそれを見て、テーブルに置き、立ち上がる。
グローブをはめ、しっかりと手首を止め、入り口に向かい歩きだす。
「ど・・・どうしたんだ???いきなり?」
慌てて後を追い、たずねるハーディンを振り返らずデスブレスソードを手に取り、両手を掲げた。
「Rikie
shana gonoa・・・・ziephan・・・・・・」
WWの詠唱を自分にかけ、わずか振り返り、一言だけ告げる。
「ちょっと出かけてくるわ。夕食までには帰れると思う。」
それだけ言って日が傾き始めたドラゴンバレーに走りだす。
『セイクレッドへ。
新人さんも増えたからINESSクラハンするよ~暇だったら来てね☆
折角だからイサカ様に突っ込んで見たりを企画してるよ♪
土曜日のお昼ごろからDVとつにゅするからよろしくね~(*^.(^^*)
PS、オノエルから。新しい武器はもう少しマッテテねって☆』
「・・・・まったく・・・無茶にもほどがあるわ・・・・。」
そう呟きながら崖の上を走る。こんな日の為に、ハーディンにナイショで作っておいた
崖の間を繋ぐ道。まさか使う日が来る事になるとは思わず最終的には趣味で完成させた
蜘蛛の糸を精製(作り方資料提供ハーディンの私塾)して作ったロープの道。光の屈折の関係
で下からはその道は見えない。 下に偶然いたパラディンが
「なんだ・・・?」
と見上げて首をかしげていたのは無視してデーモンを揺らして猛ダッシュをする。
「イサカに手出したら私でも説得なんてできない。」
「おーいたいたぁ♪」
イサカが見え、うきうきで言うヨハネに猫は再び説得を試みる。
「やっぱりヨハネさん・・・やめたほうがいですよ・・・タンカーいないし。」
その言葉を全く真剣に聞かないでヨハネは答える。
「タンカーいないのはいつもの事じゃん~ルーツで魔法で集中ボコでおっけーでしょー。」
「僕近距離なんですけど・・・。」
そういいながら短剣をちらつかせる猫だが、振り返りもしないですでにヨハネは
打ち合わせを始める。
「とーりあえず、あたしが一発ぶち込むから翼ちゃんとキマエラルーツお願いね。
スリーピングクラウドとスリープ酷使してくから、攻撃はその後で~TIA、ワタシ GO
イウ マッテテクダサイ OK?」
「OK^^」
「・ ・ ・」
全くスルーされてどうしようかと悩む猫の方をいけぽんがポンッと叩く。
「諦めろ猫。ヨハネさんが聞くわけがない。」
「・・・はぁ。」
深く深くため息をつくとそういう時だけヨハネは反応する。
「兄貴。人前でため息つくのは失礼よ。」
「・・・・・・」
若干むっとしながらも諦めて話を聞く。
「じゃ、がんちゃんとテイルくんはヒール以外はしちゃだめだよ~?あさっちは2人の事守ってね?
近づくと命の保障できないから三人はここから動いちゃだめだよ?」
「はーい!専属ヒーラー尻尾ですね!」
「あいあい。」
「分かりました。」
年少組みの返事を満足そうに聞き、向き直る。ただ、この時点でヨハネの指示が激しく
まずかった事に誰も気づかなかったのも大きな誤算だった。
「そいじゃ突撃するよー!」
「ヤバイ・・・・間に合わない・・・・!」
爆走中のセイクレッドは表情をこわばらせる。イサカの気配が一気に殺気に変わったのに
気づき、冷や汗をたらす。
「く・・・・」
そう言いながらも走り続けると近くにもう一つ見知った気配を感じる。
「・・・下か!」
蜘蛛糸の道を蹴り、一気に下に落下する。
「えでぇいん!!!」
下をストライダーでのんきに走っていた知り合いのシリエルを見つけ、そのストライダーの
背に飛び降りる。
「は?・・・・・ヨハネス・・・?何?」
「あら、いちごちゃんもいたのね。ハローって説明は後!走って!!!」
あくまで冷静に答えるシリエルに向かってヨハネたちの気配のする方を指差す。
「え?何?」
「このままだとヨハネが死ぬのよ!急いで!!!!」