【この小説は「月の光、悪夢にさえも祝福を」の後のお話です】
ここはギラン。さまざまな専門店が数多くあり、また露店商が道を埋め尽くす勢いで立ち並ぶ
アデン1の商業都市。
時間は夕食時。帰還してきた冒険者たちがごった返すこの村を、一人のドワーフの少女が
人並みを掻き分けるようにして走り回っていた。
「オルちゃん、悪いんだけどまた荷物頼めるかなぁ〜?明日の昼までに届けないといけない
荷物があるんだけど・・・」
「うん、じゃぁ配達終わったらお店よるから待っててね〜^−^」
そう笑顔を振りまきつつ右手には肩にかけた大袋。左には何かが書かれた台帳。
腰にも重そうなポーチを2つ下げて走りまわっている。
彼女の名前はオノエル。放置されてはいるがINESS盟主ヨハネ・スリエルの養女である。
「あ、オノエル。」
名品館への配達を終え、店を出ると見知ったプロフィットの女性に声をかけられる。
「青おねえちゃんこんばんは^−^」
「はい、こんばんは。」
ペコリとかわいらしく頭を下げてから、慌てて台帳を開く。
「青おねえちゃんにもお荷物あるよ〜ダンおじいちゃんから2次素材各種〜読み上げるから
確認してね〜。」
そういいながら青の前にずらずらと大袋から出した素材を並べる。
「えーと純白研磨剤28個でしょー、ミスリル合金でしょー・・・・・・それとね・・・・」
「うん。確かに。サインいるんだっけ?」
そういわれて台帳とペンを出す。
「うん、ここにお名前書いてね〜」
ごそごそとやり取りをしていると
後ろから不意に顔に冷たいものを当てられる。
「うみゅにょ?!」
「ふふ、冷たかったかな?」
振り返ればそこにも見知った女性の姿。
「ぶるーお姉ちゃん!」
「こんばんは。走り回ってる姿見えたから。はい、ぶどうジュース」
「ありがとぉ^−^」
にこにこと受け取り、階段に腰を下ろす。
「配達はもう終わったの?」
エルダーのブルーさん、プロフィの青さんに囲まれて、こくりとうなずく。
「うん、今日の配達分は終わったから明日の朝1でオーレン向かえば大丈夫〜」
そう言ってごきゅごきゅとジュースを幸せそうに飲む。
最初はヨハネの友人たちの荷物運びだったはずが、だんだん顔がひろまり、
今では「早くて安いが大荷物は運べない個人運送屋さん」として各村で荷物を頼まれる
ようになってしまっている。
「その様子だと・・・今日のINESSのクラハンは行かなかったみたいだね。」
そう青さんに言われてうなずく。
「お仕事忙しかったしDVじゃ足手まといになっちゃうもん。ご馳走様でした!」
「おそまつさまでした。」
オルの笑顔にブルーは穏やかに微笑む。
「さーてと。ヨハネお姉ちゃん探さなくちゃ。晩ご飯には顔出すって約束してるから。」
そういいながら再び荷物を背負い始める。
「あら?ヨハネさんたちならさっき宿屋で見かけたよ?INESSの人いっぱいいたけど・・・。」
ブルーさんの言葉に目をキラキラさせる。
「セリア亭?みんな無事だったんだ〜^−^」
そう心から喜んだ様子で笑顔を浮かべていた・・・・・が。
「珍しくセイクレッドさんもいたけど・・・・。」
その言葉を聞いて笑顔が凍りつく。
「・・・おばちゃんも一緒にいたの・・・・?」
不自然なオノエルの様子に首をかしげつつうなずく。
「ええ。一緒に食事とるって・・・・。」
「・・・・・嫌な予感がするぅ・・・・お姉ちゃんたちまたねっオルちゃん行かなくちゃ!
お荷物あれば受けるけど大丈夫?!」
「私は大丈夫よ^^v」
「私もないかな。」
その言葉を聞いてうなずき
「それじゃブルーおねえちゃんジュースありがとう!青おねえちゃんもばいばい〜〜」
そう言って走り出す。
「オノエル」
2人がほぼ同時にWWをかける。一旦振り返りペコリと頭を下げる。
「ありがとう!」
「いっちゃったねー。何急いでるんだろ・・・・。」
そう首を傾げるブルーさんに思い出した用に青さんがこぼす。
「そういえば・・・昔パルチ近くの飲み屋でセイクレッド有名だったらしい・・・・。」
「え」