オノエルの嫌な予感は、的中していた。

宿屋のレストランの入り口にたつと、中からよく知っている声が聞こえた。

「ちょーっといいとっこみってみーたいっ!
そーれ!いっき!いっき!・・・・」

その掛け声にあわせてたくさんの男の人たちの野次やら歓声やらが聞こえる。

それがイキナリブーイングに変わるとこれまた見知った声が聞こえた。

「あーっはっは!私に勝つには20年ほど早かったみたいねボウヤ!」

かるいめまいと頭痛を覚えつつ、勢いよくレストランの扉を開ける。

「せいくれっどおばちゃん!!!!!」

「あらオノエル。」

「いよーオノエル」

見知った声の主2人が気づいて手を振る。が、その状況が問題だった。

「・・・・おばちゃん!デーモンで机の上に足乗せちゃだめ〜〜〜〜!!!!」

分かりやすく状況を説明しよう。レストランの一番中央のテーブルのところで

左足を椅子にのせ、右足をテーブルに乗せたセイクレッドが空のグラスを持って振り返っている。

(装備。デーモン上下)

その横で手を叩いていたのをとめて振り返る椅子に座ったクロフォード。

その回りにテーブルと2人を囲むようにして群がる冒険者(全て男)

ついでにセイクレッドの向かいでグラスを持ったままテーブルにつっぷしているHF男。

つまり

飲み比べ大会

勝者セイクレッドというのも予測がつく状況である。

「おばちゃん禁酒中じゃなかったの?!」

「1年近く飲んでなかったんだからたまにはいいじゃん〜」

「1年じゃなくて7ヶ月と24日でしょ?!」

細かい数字を並べながら叫ぶとセイクレッドはけらけら笑いながら応える。

「あんまり細かい事気にしてるとはげるわよー?」

「はげっ・・・・・」

ひきつるオノエルをよそに既にセイクレッドは次の挑戦者を募っている。

「あと何人だっけ?」

「あと2人で今日の宴会分は確保できるわね。他にはいない〜?私と勝負する度胸の

ある奴は?!」

「よし俺がやろう」

そう言って出てきたのはオークの男性。セイクレッドがにやっと嬉しそうに笑う。

「楽しめそうね・・・・!マスター!」

「おっ次は何いくかい?ブランデーの次はウイスキーの高いのあるよ?」

すでにマスターもノリノリである。(そりゃこれだけ高い酒飲みあってれば売り上げ上々なわけだし)

「ふ・・・そうねぇ〜一戦目はそれでいいか。それお願い。」

そういうとマスターはグラスを出し始める。・・・が。

「マスター!中ジョッキでちょうだい。」

「・・・・は?」

「氷一個でいいから。中ジョッキ。」

その場のギャラリーが凍りつく。ちなみに今セイクレッドが頼んでいるウイスキーは

アルコール度数43%のものである。

「勢いのある姉ちゃんは好きだぜ・・・くくくく・・・・」

「強気なオークは嫌いじゃないわよ・・・ふふふふ」

すでに何か間違った空気が流れているが次の瞬間にはギャラリーが再び歓声を上げる。

 ダンっ

テーブルの上に20kを叩きつけるオーク。それを確認すると運ばれてきたジョッキに手をつける。

「・・・?おばちゃんはお金賭けないの?」

そう首を傾げるオノエルに横からクロフォードがぼそっと言う。

「あーセイクレッド一文無しでさ〜それで賭けで今夜の飯代賭けて勝負してるんだよ。」

「・・・・?でもおばちゃんも何か賭けなきゃアンフェアじゃない??」

「賭けてるわよ〜ちゃんと。」

横からセイクレッドが笑いながら言う。

「?」

再び首を傾げるオノエルをよそにオーク男はニタニタ笑いながらセイクレッドに言う。

「本当に俺が勝ったら今晩付き合ってくれるんだろうな?」

 

ぱるばすふぃりあ〜オノエル特別編〜第二話