ちなみに例のテーブルでは・・・・。
「セイクレッド大丈夫か?顔少し赤くなってきたぞ。」
「飲むにはまだまだいけるけど、とっととコイツ倒してもう一人やらないと・・・
まだ今日の宿泊費が足りない。」
気遣うクロフォードに振り向きもせず答えると再び店のメニューに目を落とす。
もうすでにオークとの6杯目を終えて。強い酒は飲みつくしている状態である。
「まずいわね・・・もうアレしかないわ・・・・。」
そうメニューの一点を見つめていると待ちかねたオークが口を開く。
「姉ちゃんますます気に入ったぜ。俺で最後にしないかい?後悔はさせないぜ?」
そう言われわずかに目線をあげる。
「あんたがあと20k出してくれればラストいけるんだけど。」
その言葉にオークは嬉しそうにぐははーと笑い、机の上にアデナをばら撒いた。
「これでどうだ!」
それを冷めた目で見つつ、クロフォードに短く告げる
「いくらある?」
そそくさと数え始めたクロフォードが顔を上げた。
「んーと80kか?さっきのとあわせて100kくらいじゃろ。」
「よし。」
にやっと笑うと立ち上がる。
「後悔しても遅いわよ?」
「はっはっは!忘れられない夜にしてやるよ!」
ニターっと笑うオークにセイクレッドの目つきが変わる。
「マスター!」
「あいよ!」
「スピリタス!タンブラーで頂戴!」
「?!」
その場にいた全員が固まる。
酒を飲まない人でも聞いた事くらいはあるだろう。
スピリタス。アルコール度数96%の世界最強の酒である。
本来寒い国でボトルキャップなどにわずかについでカポっと飲むお酒。
それを普通のグラスで出せと叫んだのだ。周りが固まるのも無理もない。
さすがのオークも顔色を変えた。
「後悔しても遅い・・・言ったはずよ?」
相変わらずの余裕の笑みで言うセイクレッドに今更引けるかとばかりに食って掛かる。
「やってやろうじゃないか!」
テーブルにマスターが持ってきたグラスに手をかける。
「クロちゃん、カモン」
「お、おう。いくぞー。はい!ちょぉーっといいっとっこみーてみったい!そーれ!」
再び始まった音頭に固まってたギャラリーの石化が解けて続いてはやし立てる。
「いっき!いっき!いっき!いっき!」
「ゴフっ」
先に吹いたのはオークの方だった。
噴出した先にいた兄弟の煙草に引火して、火が出る。
「水!!!火!!!」
騒ぐテーブルの向かいを見ずにセイクレッドは最後の一滴まで飲み干した。
「っっっかーーーーーーーーーーーーーー」
親父のように息をクハーっと吐き、白目をむいて倒れたオーク(その周辺は消火作業中)
を上からフッと見下し、空のグラスを上げる。
「またおいでボウヤ・・・・。」
さすがにギャラリーも言葉をなくし呆然とその様子を見てたがしまいには
拍手喝采となる。
「すげー姉ちゃんだなー」
「オークに勝ちやがったよ・・・」
「どんな腹してんだ・・・・」
などという言葉をまるっきり無視。机から足を下ろすとマスターのほうを見やる。
「この騒ぎの会計はそこのオーク持ちで。」
そう言ってINESS連中のいるテーブルにてくてくと向かい、クロフォードもその後を追う。
「ヨハネ、今日の宴会分と宿とってなかった連中の分の宿代。残りはあんたらの宿代に使いな。」
そう言いながらクロフォードと戦利金をテーブルに置く。
「お疲れ〜すわりなよー」
のん気にあいてる椅子を指差す盟主に頷いてから
「あー先にトイレ行って来る。飲みすぎて腹たぽたぽ」
そう言いながら荷物を預けカウンターの横へと消えていく。
一部で伝説となっていたセイクレッドの飲みぷりを目の当たりにし、
まだその他大勢は盛り上がっている。
「かーーーカッコイイねーちゃんだなぁ。」
「スタイルもよければ顔もいい、度胸もあるときたもんだ。」
「・・・だけど絶対彼女にはしたくねーな・・・・。」
「嫁にもな・・・・。」
「想像しただけで恐ろしい・・・・・。」