血・束縛・反逆・・・解放〜sacredモノローグ〜第3話

その日から度々その女と食事を取るようになっていた。
 相変わらず意味不明な奴の話をぼんやりと聞きながら酒を飲む。
その横で肉を幸せそうにほおばりつつ彼女はいつも言うのだった。
「お姉さんってなんか他人のような気がしない〜」
よくこんなノー天気で警戒心もない女が この世界でここまで生きて
これたなと思いながらも、つられて警戒を解きかける自分に気づく事もあった。
こいつになら話してもいいかも知れない。そう思った事もあった。
だけど結局何もいえないまま数ヶ月がたった。
「おじちゃんカエルのぴょんぴょんあげとジンジャーエール〜」
「モロトフウォッカとサバの味噌煮」
いつも同じようなメニューを2人して頼みながらいつの間にか
奥の隅っこの席に自然と座る。
ただ、いつもと違っていたのはその横のテーブルにガラの悪い連中が座って
いた事くらいだ。
マスターが頼んだものを運んできながら耳元でささやく。
「気をつけな、あいつらさっきどこかの血盟にケンカしかけられてボロ負け
したらしくて機嫌悪いから。お前さんでもあの人数は辛いだろう?」
それだけ言って立ち去る。
横目でチラッと見ると目があってしまった。
一人ならここで乱戦で暴れるところだが、この女を巻き込むわけにはいかない
すぐに目をそらす。が、そらしてすぐに気づく。嫌な奴に会ったと。
「ほードコの低レベル者かと思えばヨハネじゃないか」
かちんときながらもシカトを決め込む。横で首を傾げる「ヨハネ」に目で合図をしながら
(分かったかは別として)黙々と酒を飲む。
「強化レザー?お前まだ二次転職もしてないのか、主席卒業のくせになんなんだ?」
一人なら遠慮なく回し蹴りを合図に乱戦に持ち込むのにこっちはとぼけた
エルフWIZと2人。相手は6人、うちWIZだと思われるのが3人、いくらなんでも分が悪い。
「こいつ知ってるのか?」
男のクラン員と思われるエルフ男が言う。
「知ってるも何もお前も名前くらい聞いたことあるんじゃないか?
パブテスマ一族の女だよこいつは」
「パブテスマって神聖生物のか?」
だったらどうしたと言いたいのをこらえつつ武器になりそうなモノを
目で探す。この時点でやる気になってるのは酒の勢いという事にしておこう。
「いいのかヨハネ〜こんなとこで酒なんか飲んでないでとっととビショップ
の転職した方がいいんじゃないかぁ?」
「お兄さんたちヨハネさんのこと知ってるのぉ〜?」
とぼけた女が口を挟む。
「・・・・あんたは黙ってろ。」
そういうと大人しくしゅんとする。
「なんだこんな変な女と一緒に遊んでる場合かぁ?」
「あんたには関係ないでしょ。」
我慢も限界。酒のグラスを置き、はずしていたグローブをはめなおす。
「表でな。むしゃくしゃしてるんだろう?相手になってあげるわ。」
立ち上がりまっすぐに出口へと向かう。おどおどするヨハネに一言
「あんたはここで大人しくしてな。」
それだけ言って護身用のナックルを持つ。
 こんなルーン文字すら読めなかったアホに馬鹿にされる言われはない。
 こんな奴の口から私のことを「ヨハネ」に話されたのも気に入らない。
 大体こいつにはガキの頃散々絡まれた記憶がある。



ぶっ倒す。