12、ただいま。

「自分からタゲとんな!!!ローブで!!!!」
「いたたたたたたた。るおにーちゃんありがと。」
「まさかあそこでフェス打ち上げるとは・・・。」
「バウはいつでもスポを忘れてはいけないのでぇす。」
「見習っとけヤワ」
「く・・・・」
連れてきた血盟員の手当てを受けながらオルがえっへんと言う。
そして。

「おねーちゃん、オルちゃんが分かるんだよね?」
そう、気まずくて会話に入ってこれず、ラズリの横に座っていたヨハネに近づく。
それを見て、少し離れたところで手当てを受けていたセイクレッドもまた、
立ち上がる。
「うん・・・ごめんね・・・オノエル・・・。ずっと・・思い出さなくて。」
「そーじゃないの。もっと先に言う事があるでしょー(・_・?)」
そう言われてうつむいてた顔を向ける。
「・・・?ご・・・ごめんなさい?は今言ったか・・・・。」
「帰ってキタ時はなんて言うの(・_・?)」
そう、だんだん涙声になりながらオルに言われ、ヨハネは立ち上がった。

「ぁ・・・・ただいま、オル。」

「おかえりなさい・・・よはねおねーちゃん・・・・!」
とうとう泣き出したオルがしがみつく。
一番なくのをこらえてきたのは間違いなくINESSではオルだった。
ヨハネが消えた時、まだ8歳。辛くないわけがなかった。
『戻ってくるって信じてる』そう言い聞かせて必死に前を向いてきたんだ。
「ごめんね・・・オル・・・。ありがとう・・・・。ごめんね・・・・」
そうその頭を撫でる。
それを黙って後ろで見ているセイクレッドに気づき、またヨハネは「ごめん。」と言うと
オルは涙を拭きながら手を離す。
「オル、ちょっとどいて?」
セイクレッドがそう言ってオルが一歩下がった瞬間。

「ごめんじゃないわよ、このボケが!!!!」
「うぎゃぁっ」
ヨハネの右顔面にセイクレッドの左ハイキックがまともに入った。
「あんた!!!この20年何してたわけ?!遅いのよ!何年待たせてんのよ!
何が『ごめん・・・』よ!!!それで済むと思ってるわけ?!大体私たちに何にも相談なしで
愚痴も言わずに一人で絶望して、INESSほったらかして!!!あんたが消えた後どれだけ
大変だったか分かってんの?!事情知らない元INESSメンバごまかすのだって
どれだけ神経磨り減ったか分かってるわけ?!さっきも言ったけど
あんたが消えて黒猫とか散々あんたを探し回って大変だったんだからね?!
TIAは『カミサマ、オイノリ、スル、デス!』とかシーレンの神殿に就職しちゃうし!本当の事言えないのが
どんだけ辛いか分かる?!あんたの事情知らない連中がどれだけ傷ついたりしたか
分かってるわけ?!おかげで皺増えたわよ!!!!白の時間には入れなくなるし!!!!」

ポカーンとするオル以外の全員を完全に無視してセイクレッドが怒鳴る。
もちろん、蹴られた超本人、ヨハネも口を開けて蹴られた顔を抑えてポカンとしている。
ただ、オルだけはその様子を嬉しそうに見ていた。
かつての二人と同じだったから。

「大体、何でテンプルナイトになってるわけ?!100歩譲ってテンプルやってるのはいいわよ、
あのエルバソどこやったのよ!私預かってないわよ?!何、生まれ変わっちゃったら忘れてきたわけ?!」
「あ、いやラザ君とは会えて・・・彼も生まれ変わったはずだから・・・・。」
「あーーーっそ、なんでそれを私に報告しに来ない?!本気で心配したわよ、あのエルバソなくて
あんた帰ってきてぴーぴー泣くんじゃないかって!!!!大体会えたって何?!どこ行ってたのあんた?!」
「え・・えーとなんか赤い服きたひゅーまんっぽいおねーさんもいるトコ?」
「どこよそれ?!」
「さ・・・さぁ・・・」
「あーーーーーーもう!!!!!・・・う。」
一気に怒鳴りまくって、流石にふさがりかけの先ほどの傷が痛んだのか、左肩を押さえる。
「せ、セイクレッド大丈夫・・・?傷開いたんじゃ・・・。」
「まったく・・・・・。本当にあんたは・・・・」
そう力なく言う。
「セイクレッド・・・?」
「・・・支えてやれなくて悪かったわね・・・。」
そう、かすれた声でセイクレッドは呟いた。
「え・・?」
「愚痴でもなんでも吐けばいい、だめならせめて泣いてよ。全部聞いてやるから。
だから・・・もうあんなの絶対にご免だわ・・・・。」
「セイクレッド・・・・。」
「でも・・・・戻ってきてくれてよかったわ・・・ヨハネ。」
そう、顔を上げて微笑んだ。
「ごめん・・・ごめんセイクレッド・・・・。」
今度は、ヨハネが泣き出す番だった。
「ボク・・・セイクレッドの気持ち考えずに封印してって・・・スリエルを・・・。」
「本当よね。」
「何年も待っててくれたのに今日までぜんぜん昔の事思い出さなくて・・・。」
「そうね・・・。」
「INESS・・・捨てて・・・・」
「安心しなさい。INESSならまだ残ってる。私とオルで守ってきたから。
みんな、もういないけどね。」
「ボク・・・ボクは・・・・!」
「もういいわよ。何も言わなくて・・・帰ってきた、それで十分だわ・・・」