「ヨハネいる?」
「あ、セイクレッドおかえ・・・・・ってどうしたのそれ?!」
乾いた血に塗れた左腕をぶらぶらさせながら右手でチュニックを持ってドアから入って来た
セイクレッドにヨハネは悲鳴に近い声をあげる。
「騒ぐな。もう塞いであるわよ。ちょっとムキになって木に叩きつけたら枝刺さって流血しただけ。」
そうチュニックをベッドに投げ捨てて片手でバスタオルと下着を出しながら言う
セイクレッドの腕を指さしてヨハネは呟く。
「それ・・・それで村の中歩いて来て何も言われなかった・・?」
「人殺し!とか叫ばれたわ。」
「んでどしたの。」
「自分の血よアホ、ディフェンダー呼ぶ前にヒーラー呼んでよって叫び返してやった。」
「・・・で?」
「そしたら本気で呼びに行こうとするから『っていうかあたしクレだから自分で治せるけど。』
って言ったら石投げられた。」
「それで頭からも血出てるわけね・・・。」
「え、マジ?・・とりあえず風呂で流してくるわ。」
その言葉にヨハネも立ち上がる。
「ボクも一緒に行く〜。」
「あ、髪洗わないでよ。湯冷めするから。」
そうタオルを出すヨハネに言うと首を傾げる。
「もう少し夜が更けたら動くわよ。とりあえず状況把握しましょう。」

まだ客も多い露天風呂につかりながら二人並んで「フー」とため息をつく。
入った瞬間に上がった悲鳴もヨハネの努力でなんとか今は賑やかな笑い声に代わっている。
「・・・・で、そっちどうだった?」
セイクレッドの言葉に髪をてっぺんで丸めたヨハネが顔を向ける。
「あのね・・・・んー・・・あの子に本当の事話すの・・・・残酷すぎるかもって思った。」
その言葉にようやく気づいたのかという顔を向ける。
「そりゃそうでしょ。親死んだ時私だって泣いたわよ。」
「セイクレッド分かってたの?!」
そう湯を叩くと苦笑を浮かべる。
「そりゃ経験者だもの。・・・・だからさ、親御さんに判断は任せようと思って。」
「え・・・?」
「とりあえず親御さん・・・まぁ多分遺体と魂しか見つけられないけどそれ探し出して
その二人に判断を任せるわ。死を知らせるか、それとも隠すか・・・はね。」
セイクレッドの言葉の意味を理解してヨハネは湯船のふちに寄りかかる。
「・・・・・ボク軽率すぎたね・・・。」
「・・・だからあんた一人じゃやらせないって言ったのよ。でも」
でもで言葉を切ったセイクレッドを見ると湯面を睨み付けて続けた。
「このままにしときたくないってのは、あんたらしくて嫌いじゃないわ。」
「・・・うん。」
そう言うセイクレッドの肩に甘えるように頭をのせる。
「甘えるな。」
「いいじゃん。」
「女同士で気持ち悪いわね。そういうのは別の血盟員にしなさい。」
「他のみんなにはもっと激しく抱きつくもん。」
「・・・・・・・・。」
ため息をつきながらそんなヨハネをシカトするように自分の左腕を湯船から出す。
「傷、残ってるね。」
ふさぐコトはそれほど難しくはなかったが、枝に複雑に刺さってしまった皮膚は
そのままの形で残ってしまっている。
「まぁいいわよ。今更嫁行くわけでもないし。その甲斐はあったしね。」
そう開いたり握ったりを繰り返しながら言う。
「結局何してたの?なんかの修行?」
首を傾げるヨハネに笑ってみせる。
「まぁそんなカンジ。後で分かるよ。・・・血流したしそろそろ出ましょう。
作戦開始するよ。」