「・・・・私たちには話せて、よっぽど付き合いの長いあの二人には聞かせたくない話・・・・。」
取り出したタバコに火をつけ、煙を吐き出してからセイクレッドは二人を見る。
「『神聖生物』なら話せるって解釈していいのかしら?」
その言葉を聞きながらずっと立っていたヨハネはベッドのセイクレッドの横に座る。
「ドルフさんから聞いたわ。ラピスさん、貴方が大昔アデン制圧してたオルフェウスの
血筋の生き残りだっていうのは。それが何か関係があるの?」
「あぁ・・・それで名前にオルフェウスが・・・。」
呟くヨハネを横にラピスは重々しく口を開いた。
『オルフェウスの一族は・・・決して戦略などに長けていたわけではありません。
ただ、人と違う力を内に抱えていただけ。』
「パブテスマみたいに?」
ヨハネの言葉に首を横に振る。
『オルフェウスの力は具体的な力なわけではありません。同時に次の世代が生まれれば
そのまま引き継がれかつての器には何の力も残らない。』
「今その力を持ってるのはオノエルだけって事か・・・・なんなの?その力って?」
セイクレッドの言葉にも首を横に振る。
『詳しくは知らないのです。ただ、言い伝えで「神の揺り篭」「制御者」という事しか
伝えられていません。そして・・・』
ラピスはそこで一度言葉を切った。
『生きている間、その二つの言葉を口にする事は許されません。血縁者全てです。
口にすれば神の神罰が下ると。』
その言葉にヨハネの様子が変わった。それに気づいたセイクレッドが顔を向ける。
「・・・ヨハネ?」
「・・・オノエルの揺り篭・・・・母たる力の制御者・・・・」
うわごとの様に呟く。
いつもの高いトーンからは想像のつかないハスキートーンの声で。
「・・・・ヨハネ?どうしたの?」
その様子に若干嫌な感じを覚えたセイクレッドは強くヨハネの肩を揺する。
「・・・ほえ?え、何?」
「あんた今・・・・いや、なんでもないわ。」
セイクレッドは頭の中で感じていた。触れてはいけない何かに。
それを何故ヨハネが無意識に口にしたのか、それを考える事すら放棄したくなるほどの。。
感受性がやたら強い、それだけでは説明のつかない何か大きなモノとヨハネが一時的に
繋がった事に感づきながらもセイクレッドは酒を思いっきり流し込み、
「またいつもの感情移入だ」と思い込もうとした。
『あの力がある限り、多少傷つける事は出来ても殺す事は決して出来ない。
宿主がどんな状態に陥ろうとその力は宿主を守ります。・・・かつて私が宿主だった時、
それが理由であの血盟にいました・・・。』
ラピスの言葉にセイクレッドは気を取り直すように髪をかきあげる。
「決して死なない体。しかも体力がないのが欠点のDEでそれじゃ使い道はいろいろあるわね。」
「セイクレッド。」
「ぁ?」
予測していた状況と実際の状況、それを頭の中で整理していたセイクレッドにヨハネは
まっすぐに言い放つ。
「正面から暴れよう。コソコソする必要ないよ。」
「え、けどオノエルは大丈夫としても、後釜血盟とか繋がってる可能性あるでしょうが・・・・。」
「大丈夫。繋がってても・・・多分血盟としてボクに手を出すコトはないよ。」
少しさびしそうに言うヨハネに首を傾げる。
「え・・・どういう・・・・。」
「今の血盟は・・・ボクの友人だった人が仕切ってるの。ダメな人だけど、嫌な血盟だと思うけど
でも友達だった人に手出すほど救えない人じゃない。だからボクは、あんな血盟にいるって
ずっと知らなかったんだもの。」
苦笑して見せるヨハネにポカーンとした顔を向けてしまう。
「あんたの友好関係って一体・・・・・。」
「だってだって!普段はすごくいい人だったんだよ?!マジで!
二次転職する前とかすごい助けてくれたし・・・でもPKと一緒にいるとこ見て
2時間お説教してからぜんぜん話してないけど・・・・。」
「せ・・・説教??;;;」
「でもその後も・・・明らかに返り血びっちゃりな人と一緒にいるとこ遭遇したりとかしても
ボクの横は素通りして見える場所で何かする事ないし・・・。
止めてあげられたらもっといいんだけど・・・。」
そうシリアスモードの壊れ始めたいつもの顔で言われてため息をつく。
「・・・あんたお人よしも大概にしないとそろそろ死ぬわよ・・・。」
「もうストーカーなら何回もあってる!」
「えばるなっ!!」