「・・・・・で。」
「ふ?」
口いっぱいに詰め込んだ海鮮丼をもぐもぐしながら首を傾げる。
「今日の夕方決行なのも分かった。あんたの言うとおり計画も修正した。
ついでにドルフさんは遺体の回収行ってもらってる。この天気なら問題なく
予定時刻までには終わる。」
「ふんふん。」
どんぶりを持ったまま首をコクコクするヨハネ。
それを見ながらセイクレッドは深いため息をついた。
「・・・・・で、なんであんたは既に3杯目のドンブリたいらげてるわけ・・・・。
昨日のシリアスモードはどこにいった・・・・。」
昨夜の話し合いの後、翌日の夕方5時に決行を決め、その場を解散。
ドルフとウェルダンは明け方近くまで下のロビーでラピスたちと話をしていたようだが
朝、リングを受け取り今はしまわれた状態でセイクレッドのポケットに入っている。
「ひゃっへひゃひゃひゃふぇへひゃ・・・・」
「分かった。分かったから飲み込んでからしゃべって。」
頭を抑えながら言うとお茶をズズーッと飲んだヨハネが口を開く。
「だって腹が減っては戦はできぬって言うでしょ?」
「・・・・いくらなんでも食べすぎ・・・・。」
「まだ食べるよ。すみませーーんネギトロ丼と〜厚焼き玉子と〜鮎の塩焼き〜」
「・・・・はぁ・・・・。もうちょっとさ、こっそり偵察にいくとかさ、何か考えようよ・・・」
呆れてもう自分も酒飲んでやろうかと思い始めたセイクレッドににっこり笑ってみせる。
「大丈夫〜さっきミラージュ行かせたから〜。」
「いつの間に・・・・・。」
「あとセイクレッド寝てる間にルーンストーンも買い込んできた〜。」
そう言いながら運ばれて来たネギトロ丼の器を持つ。
「・・・・そう・・・・。」
食ってるだけに見えて一応考えてはいるんだろうととりあえず納得した事にして
自分もコーヒーのおかわりを頼む。
「で、戦い方だけどどするの?ドルフさんの調べじゃ相手58のアビスよ?本気でこられたら
ぶっちゃけシンドイんだけど。」
「だねぇ、ボク今まだ53だしねぇ」
「ついでに防御は紙。いくら向こうが防具ナシとはいえマジ武器の短剣出してこられたら
あんたそっこー戦闘不能じゃない(←53スペシン)。
私一人じゃどうしようもないのよ?(←レベル39クレ)」
その言葉に玉子焼きを食べようとしていた手を少し止める。
「うん、だからローブ替えるよ?」
「・・・は?」
「デーモンだと詠唱下がるしHp減るし。」
「いやそりゃそうだけど・・・・。」
「よかったよ、セイクレッドオーク村行ってる間に丁度出来たとこだったの。」
「・・・・え?」
「見せてあげるよ。スペルシンガーの戦い方。」
そう言って再び食べ始める。
結局ヨハネは5種類の魚介丼とその他おかず7品を平らげた。
その後宿屋に戻り、ヨハネがバッグから出したモノを見てセイクレッドは深いため息をついた。
「・・・まさかそんなもん持ってるとは思わなかったわよ・・・・。」
ファビオ・・宿屋の主人に借りてきたサラマンダーレザーメイルを着て、
ハーディンからもらったエルバソを腰に下げてセイクレッドはベッドに座って頭を抑えている。
「いやーもったいなくてまだ着てなかったんだけど。こういう場合は仕方ないかなぁって。」
言われた本人はまだ新しいアバドンローブセットを着て腰にデスブレスソードを下げる。
「よく金あったわね・・・。」
「この前ギランの商店街の福引でC最強アクセセット当たってね、
その週にソロしててコンポジ盾とフィストブレードも拾ったの。で、製作すればなんとか揃えられそう
だから初めて素材集めて作ってみました☆」
「どおりでドワ村きてから随分羽振りがいいわけね・・・。準備いい?」
その言葉に頷いて、今日は外している二刀に手を添える。
「・・・・ラザくん、ちょっと行って来るね。」
「いいの?相方置いてって?」
その言葉に苦笑を浮かべる。
「今日は手加減とか出来ないもの。ラザくんには見られたくないから。」
その言葉に少し考えてからベッドの上におかれた二刀をセイクレッドはつかむ。
「連れて行きなさい。最悪止めは私がとる。盟主のあんたが規約破るわけにいかないでしょうが。
殺ったら殺ったで私追放すれば済む話。それに・・・・。」
「それに?」
「・・・・・いや、とりあえず持って行きなさい。ほら。」
「・・・うん。」
腰につけ始めたヨハネの二刀を見つめる。
『彼』には口止めされている真実。
  彼はまだ、ヨハネの傍にいる。そして彼女を護っている。