『で・・・結局あんたは何者なの?』
夢の中でセイクレッドは力の主と向かい合う。
今日の夢はいつもと違う。いつもならそこには自分はいなくて
代わりに無駄に長い髪をした男が立っていた。
それが今は、セイクレッドの形をした自分が立っている。
『突然ですね・・・。相変わらず貴方は遠慮がない。』
力の主はそう言って笑う。顔こそ見えないがドワ村にきてすぐに夢で見た
そう・・・オノエルと呼ばれていた者。
『オノエルって一体なんなの?スリエルってのは何?失われた歴史、エルデスリエル・・・・
あれと関係があるわけ?あいつらは一体・・・』
主は黙って首を振るのみだった。
『私はそれを口外する権利を持ちません。・・・全てを知りたいのならあの島へ行きなさい。
あの方が眠るあの場所へ・・・。』
そう言って消えてゆく姿に叫ぶ
『ちょっと待ってよ!島ってどこの島?!もっとヒントを・・・・』
『次に貴方が行く場所。焦らなくてもすぐに導かれ・・・・・・。』


そこで目が覚めた。
ぼんやりとそのまま天井を眺める。
あぁ、私何してたんだっけ・・・・そうだ・・・あのムカツク女とやりあってて
んでヨハネが叩きのめして・・・んで約束どおりあの二人とオノエル会わせてやって・・・・
「セイクレッド?起きたの?」
急に見上げていた天井をヨハネの顔が遮る。
「・・・おはよ。」
そう言うと辛そうな顔で「ごめんね」そう呟く。
「なに・・・またあんた何かしでかしたのかい?」
そう言いながら身体を起そうとするがその重さに諦めてそのままの姿勢で返事を待つ。
「そうじゃなくって・・・ボクがわがまま言ったからこんな重症になっちゃって・・・。」
その言葉に笑う。
「だから、別にあんたのお人よしに付き合ってるとは言ってたけど
私がむかついたから同じくムカついてたあんたの話に乗っただけの事。
・・・それより私どのくらい寝てた?」
「4日・・・ずっと起きなくて・・・死んじゃったかと思った・・・。」
いつもならピーピー泣きわめくだろうヨハネが泣きもせずに静かに言う。
よっぽど怖かったんだろう。ある意味逆に無理しない方がよかったのかもと
少し思いつつため息をつく。
「そういや・・・オノエルたちはどうした?ちゃんと話せた?」
そう問うと頷く。
「うん、オルちゃんね・・・二人が消えるまで泣かなかったんだよ。
笑顔でね、おかえりなさいって・・・・。最後には元気でねって・・・」
「んであんたが泣いたと。」
「・・・んまぁそんなカンジだけどさ・・・だって二人消えちゃってからすっごい静かに泣き出すんだもん
かけられる言葉なんてボク持ってないし・・・抱きしめて一緒に泣くくらいしか
できなかったんだもん・・・・その後丸一日魂抜けたみたいになっちゃうし・・・・・・
ねぇ、あの二人天国ってとこ行けたかな?」
そう言うヨハネに笑ってしまう。
「あんた天国とか信じてるの?」
「え?!ないの?!」
「私はないと思ってるけど?まぁ・・・でも魂も浄化済みだし悪いようにはならないよ。
何より話してみて分かるじゃない。」
「・・・そだね。」
そういうとやっとヨハネは笑顔を見せた。
「そういやあの女どうした?バレリアって奴」
「あ、なんかボク全力で魔法打ってたせいで・・・・なんかね
歩けなくなっちゃったらしくてさ・・・で、ラピスさんって思ってたよりこの村で
慕われてたらしくてエルダホールの長老さんたちも怒ってて。」
「うん?」
「そのままドワ村永久追放。」
「はっざまーみろ。そのまま生きて自分の罪の重さ思い知れってのよ。」
と悪態をつくとヨハネが苦笑してから深呼吸を始める。
「・・・で・・・・あのね・・・セイクレッド・・・ボク色々考えたんだけど・・・・。」
いいずらそうに何かを言おうとするヨハネの口調に嫌な予感がする。
「・・・・・あんた人が寝てる間に何かしたわね・・・また・・・・。」
「いやっでもねっ今回はちゃんといっぱい考えたよ?!本当だよ?!」
もうその言い方で既に怒られるような事したのばれっばれなわけで。
・・・と。
「おねーちゃん入るよ〜・・・あ、おばちゃん起きた??」
予想外にふっつーーーーの顔のオノエルが部屋に入ってきた。
「オノエルあんたどうしてここに?ここってウェルダンさんの宿よね?」
「おねーちゃんまだ話してないの?」
そんな会話を聞きつつ先ほどからどうも「寝てる間に何かしました」発言に続き
状況置いていかれてることに少しむっとしながらヨハネに尋ねる。
「・・・簡潔に、分かりやすく、さくっと説明しなさい。」
「えーとね・・・とりあえずオルちゃんINESSで面倒見る事にしたから。」
「後は?」
「んでとりあえず宿はウェルダンさんにあげる代わりにオルちゃんが大人になるまで
毎月150k生活費を出すって事に・・・・。」
「オルちゃんが頼んだんだよ、オルちゃん一人じゃ宿なんて出来ないもん。」
「そう、他には?」
「え、えーとほら、オルちゃんまだ6歳じゃん?血盟で面倒見るって言っても流石に
若すぎるし?保護者っていうの必要じゃん世間的にさ?」
「・・・・・・・・・・・・・で?」
「・・・・養女にしちゃった☆」
「・・・・・は?」
「・・・えへへへ・・・・・ぐはっつ」
セイクレッドは枕元にあった何かをヨハネに投げつける。
「いったああああああい。セイクレッドこれ灰皿だよ?!当たり所悪かったら死ぬよ?!」
「養女って・・・どっからそういう発想にいたったのよこのボケ盟主!!あんたまだ二十歳にも
なってないでしょうが!あーもうなんでこう予想外の事ばっかりしてくれるかなあんたは・・・。」
そう言いながらため息をつく。本当にこいつは想像つかないような事ばっかり・・・・
年齢的に私に言えばよかったのにと思っているとオノエルが覗き込んでくる。
「大丈夫だよおばちゃん!オルちゃんがおねーちゃんの面倒見るから!」
「・・・・はぃ?」
「おばちゃんの負担少しでも減らすから!」
そうニコニコ笑いながら言う。
一体私が寝ている間に何があったんだ・・・・・・・・・。
それでもまぁ・・・・
「期待してるわ。よろしくね、オノエル。」
そう言って頭をなでる。
 無理をしてない笑顔で笑えてるのであれば
 それでよかった事にしとこう。