「はい、持ってきたわ炎のエッセンス。」
「・・・・・・」
「どうかした?」
「お前は・・・一年近く前に来たクレリックだな?」
「そうだけど?」
祖先マルタンクスに炎をエッセンスを突き出すととまどったような言葉を返される。
当然といえば当然なわけだが・・・。
「・・・1年もかかったのか・・・ご苦労だった・・・・。」
少しの沈黙の後マルタンクスが悩んだ末に出した言葉をけろっと蹴り返す。
「いや?ちょっと調べ物に追われてて神殿行く余裕なかっただけよ?」
「・・・・・・・」
「・・・・・・タイムオーバーとかあるわけ?」
眉をしかめるセイクレッドに何だこいつはという目を向けてから
言葉を続ける。
「・・・・いや、それはないが・・・・。と、とりあえずそれを飲め。」
「え、飲むの?」
全く緊張感のないセイクレッドに戸惑った様子で言うマルタンクス。
はたから見たら新手の漫才に見えるようなやりとり。
とうのセイクレッドはビンを少し見つめてからキュポンっとコルクをはずし
酒か何かを飲む勢いでグイーーーーっと飲み干す。
「っかーーーーーーーっ・・・・・・・・・・・・・・・・・
意外と熱くなかったわね。」
空のビンを見つめながら感想を述べるセイクレッド。
「・・・そうか。それならよかった。」
既に言葉の出てこないマルタンクスを腰に手を当てて見上げる。
「あぁ、なるほどね。そういうコトか。」
にやっと笑って言うセイクレッドにマルタンクスは
「何がだ?」
と疲れた様子でつぶやく。
「炎の意思飲み込む・・・つまり炎を得るってのがこの試練だったわけでしょ?
サラマンダー討伐は炎に触れる・・・それは炎の意思に触れるってのとイコール。
なるほどね・・・面白いわ。」
少し黙ってからマルタンクスが言葉を吐く。
「・・・長年求道者を導いてきたが・・・。面白いと言ったのもお前のような奴も初めてだ。」
「そう?それはどうも。んで次はどうすればいいの?」
マルタンクスの言葉に事もなさげに次の試練について尋ねる。
「ドワーフの村のガウリィトゥインクロックをたずねろ。あの者がお前を大地の意思へと
導く。」
「おっけー。んじゃありがとね。」
そう簡単に礼を言い、立ち去ろうとするセイクレッドをマルタンクスは呼び止めた
「待て。」
「ん?何?」
「名前を・・・お前の名前を教えろ。覚えていたいと思う。」
その言葉にクスリと笑うと前髪をかきあげる。
「パブテスマのヨハネ。INESSのSacred(神聖)。」
微笑み、それだけ答えるときびすを返しすたすたと出てゆく。

「あーすみません〜ちょっと聞きたいんですけど。」
村に戻ると案内人の前にセイクレッドの姿はあった。
すぐにグルーディオには戻らずに。
「なんだ?ヒューマンよ。」
「あーそうやって敵視しないでよ。私半分はオークの血入ってんだから。」
そう珍しく苦笑をする。セイクレッドにはもう一つオーク村で行きたい場所があった。
「タオラ・マクマナンとその一族の墓ってどこにある?」
「半分オークだと・・・?タオラの墓に何用だ?」
思いっきり不審そうに見られながら珍しくきれずに冷静に告げる。
「父と祖父母の墓参りよ。」

墓まで案内されるとバックの中からウォッカのビンを取り出し
おもむろに墓にかける。
「彼の娘というのは本当のようだな。」
その様子を見ながら言う持ち場を離れ墓まで連れてきてくれた案内人
にわずかに笑う。
「父を知っているようね。」
「その酒は生前彼が好きだったもの・・・・。彼は私のよき友人だった。」
懐かしむように答える案内人に穏やかな声を向ける。
「そう・・・・。」
「お前の名は?」
「ヨハネス・パブテスマ。パブテスマは母方の姓よ。見ての通りヒューマンのね。」
そう顔をあげず墓を見つめたまま答える。
「彼の遺体を持ってきたあの女のか・・・。なぜあの女は自分の近くではなく
この村に持ってきたのか・・・。彼はその程度の存在だった・・・・」
「違うわよ。」
その程度の存在だったのか?そういいかけた案内人の言葉をはっきりとさえぎる。
「確かに話せる島にオークの墓作ろうとすりゃ文句言う奴の一人や二人はいるわ。
特に神殿の連中なら。でもね。」
セイクレッド自身少しおどろいていた。母親をこうやって擁護する自分に。
「お父様が亡くなった時まだ私は幼かったけれど覚えてるわ。
お母様が泣きながらお婆様・・・マクマナンの方のね。生まれた場所へ
返してあげなければと、自分には父の魂が残されているからと言っていたのを。」
驚いた顔をする案内人を少し見上げて少し笑う。
「うちの神聖生物の家系は確かに厳格なビショの家系よ。
でもそれでもお父様と結婚して私や弟たち生んでるお母様を・・・
そこまで極悪人にしないで頂戴。」
「すまなかった・・・・。」
そう口に出す案内人に苦笑を返す。
「まぁ私もあまりお母様好きじゃなかったりもするんだけどね。
ただ、その件で母を責めると苦しむのはお父様だわ。」
いいながら再び墓へと目を落とす。
そして
「少し、一人にしてもらっていい?」
そう呟く。
「・・・ああ。帰りに立ち寄ってくれ。ヨハネス。」
案内人の言葉に少し微笑む。

墓の前に座り込み何を話すわけでもなく墓を見つめる。
しばらくそうしていて。結局無言のまま立ち上がりその場に別れを告げる。

「んじゃアデン戻るわ。転職クエの途中なもんで。」
「そうか。またくるといい。時間がある時にな。歓迎する。」
「ふふふ、酒でも用意してくれる?」
そんな軽口を叩きながら、ゲートキーパーでアデンへと戻る。
 次はドワーフ村。もう一人の揺り篭と出会う村。