『なぜ、貴方はそこまでスリエルに固執するのですか?人である貴方が・・・・。』
『分不相応だと思いますか?オノエル。私は、あの方の立場などどうでもいいのです。』
『どういう・・・意味ですか。』
『大切なのは私があの方に逢い、そして惹かれ、その行動に興味を示したという事のみ。
私は例えあの方が悪魔や死神だったとしても今のように尽くしたでしょう。』
『あの方を侮辱なさるおつもりですか』
『違いますよ。友、恋人、家族。それに使われる言葉を選ぶのなら私はあの方を愛している。
真実はそれのみです。神としてではなく、あの方の存在の全てを。』



「ん・・・・・・」
翌朝目を覚まし時計を見ると8時近くを指している。
そろそろ動かなければと着替えながら隣のベッドを見るとヨハネはまだ幸せそうに眠っている。
「ヨハネ〜?」
「むにゅ〜」
「・・・・・私出かけるから、適当に起きなさいよ?」
「ふぁーい」
そのうち起きるだろうとくしゃくしゃになった掛け布団をちゃんとかけなおしてやる。
「んじゃまた夜に。」
「いってらっさーい」
またあの夢の続き。だんだん人物が鮮明になってきている。
なんとなく自分の先祖の誰かの夢なのだろうとは思いながらも
夢に出てくる「スリエル」の名前が気にかかっていた。
そして今度は「オノエル」
何か、見えかけているモノがあるのにはっきりとは見えない。
自分の力の制御が難しくなってきたコトと何か関係がありそうな気もする。
全ては憶測に過ぎないが。

「どーも、求道者の試練で来たんだけど・・・・。」
マルタンクスに言われた通り、セイクレッドは大地の神官ジェラルドを尋ねた。
やたら営業スマイル全開のドワーフに引きつりそうになりつつも負けじと
営業スマイルを向ける。・・・・が。
「ハァ?10万アデナぁ?!んな金ないわよ。私プーなのよプー!
言い方変えても家事手伝いっ分かる?!
っていうかあんた今『儲かる商売』とか言ったわね?!」
周りの目を無視してまくし立てる。
大地の女神マーブルの事を知りたくば10万アデナをよこせと言われた反応がこれだ。
「お・・おちつきな・・・」
「ねぇおっちゃん。悪い事は言わないわ。」
そこまで言って呼吸を整えジェラルドの肩に手を置き。
「これ以上私を怒らせるんじゃないわよ・・・・。」
怒鳴り声+殺気で思いっきり遠慮なく脅しをかける。
「なっなっ。」
「私はね、詐欺とか騙しとかそーいうのすっごい嫌いなの。オーケイ?」
「いやっそのっ」
「さっきのセリフ、聞かなかった事にしてあげるわ。
チャンスは一回のみ。さぁお話をどうぞ?
ミスタージェラルド?」

「ふぁ〜よく寝たぁ〜〜!」
ベッドから出て軽く体を動かしローブを着始める。
「さぁってと・・・どうしよかな・・・・正面から行くのが一番だよね。やっぱり。」
そう言いながら財布の中身を確認する。
「よしよし。」
独り言をぶつぶつ言いながら宿を出る。
そして、昨夜オルがいた宿屋の前にたち、気合を入れてからドアを開ける。
「いらっしゃいませ〜」
出てきた女、昨晩のDEの女だ。ヨハネはフリージングシャックルを
ぶちこみたい衝動を抑えつつ話始める。
「あのぉ〜ここにオルってドワの女の子いるよね?」
その言葉に女は眉をしかめながら答える。
「いますが・・・オルがどうかしましたか?」
ヨハネは女に近寄り、小声で言う。
「あの子ちょっと借りたいんだけど一日。お金は出すから。」
はたから見たら怪しい意味に取られかねない言葉。
・・・むしろ誤解を招くように言葉を選んでるわけだが。
「と・・・言いますと?」
「コレ。80k入ってるんだけどぉ、あの子一日貸してくれたらアゲル。」
「・・・・・」
「昨日村で見かけてね、気に入っちゃったのよねぇ。」
お前誰だよというしゃべり方で話を続ける。
本人はセイクレッドの口調を真似てるつもりではあるが
これではただの危ないねーちゃんにしか見えない。
「ど?」
「・・・少々おまちください。」
ヨハネがちらつかせる布袋を受け取り、中を見ると女は奥へと入って行く。
『これでディフェンダー呼ばれたら作戦失敗だよなぁ・・・。まぁ・・・ボクの予想が正しければ
それはありえないと思うんだけど』
髪をかきあげたりしながら(本人はセイクレッドの真似をしてるつもり)待つと
少ししてから女がオルを連れて現れた。
『とりあえず成功っ』
そう心の中でガッツポーズをしてふっと笑い(セイクレッドの真似)
「それじゃ、借りてくわね。21時頃までには返しにくるから。」
ヨハネの顔を見て、わずかにあっという顔をしたオルの顔を横目で見てからその小さい手を掴む。
「?!」
状況の飲み込めないオルに女は言う。
「その人の言う事をちゃんと聞くんだよ!」
その声を背中に宿を出る。
手を掴んだまま、しばらく歩き。その間にもオルは状況が分からずなんとか止まらせようと
力を込めてみるがしっかり掴まれた手をほどけずにもがいていた。
「・・・・っとっぁっ・・・」
必死に雪をふみしめるがヨハネが止まる様子はない。
状況も分からずなんだか引っ張って行かれている状態にオルがとうとう声を上げた。
「なっ・・・・なんなんだよあんた!!!!!」
その声にようやくヨハネは足を止め、振り返る。
「あんたナニ?!昨日のお礼はもうしたはずだよ?!」
そう下からにらみつけると、オルの手を掴んでるのとは逆の手の人差し指を立て、
自分の口元に当てる。
「待って、まだもう少し。」
そう、昨日見た表情で言われきょとんとするが、少し考えて再び歩き始める。
「とりあえずお腹も空いたしどこか入ろうか。美味しいトコ知ってる?」
「は・・・?ナニ・・・?」
「とりあえず、連れ出し成功♪朝ごはん付き合って☆」
それから少しのやり取りの後、事情を説明するという条件でオルが手を引いて、
村ではナカナカ評判の食堂へと入る。
「あーそこの奥のテーブルにしてくださーい。」
店員に言って見にくい席に通してもらう。
「好きなの頼みなよ〜?ボク何にしよ〜。」
そう言いながらメニューを広げる向かいで、オルはメニューに手すらつけない。
「どした?」
「オル、お金持ってない。」
「オゴリだよモチロン。」
そう言うヨハネに不審感全開の目を向ける。
「みゅ〜じゃ勝手に頼んじゃうよぉ?」
「先に説明して。」
そう睨まれてヨハネは苦笑する。
「食べてないんでしょ?ご飯。信用してくれないかな?
ボクも血盟背負ってる身だから変な事はしようとしても出来ないよ。」
そう言って血盟の登録カードを見せる。
少し考えてからオルは口をひらいた。
「ぱんけーきせっと。」
「うんっ。すみませーん。」
ヨハネはそう言いながら店員に声をかけた。