「へほにぇ、ほふほはへふりぃへるっへひふんはへほ・・・」
「・・・何言ってるかわかんないよ・・・・。」
「ふ?・・・・んぎゅ。えーとボク、ヨハネ・スリエルって言うんだけど〜」
口に焼き鮭定食を詰め込みながら言うヨハネにオルは呆れたような顔を向けつつ
ちまちまとパンケーキを食べる。
「・・で?」
「昨日のお礼しよーと思って〜連れ出してみたぁ〜」
そう言って平らげた焼き鮭定食の皿を隅によせ、足りないとばかりにメニューを広げる。
「・・・・お礼?」
手を止めて首を傾げる。
「うんうん、宿とってくれたお礼〜すみませーん、ほっけの開き追加〜あとご飯おかわり〜」
「・・・だってあれは・・・荷物・・・・。」
「にゅ?荷物運んだのはぶつかっちゃったおわびだもん。だけど君は宿まで紹介してくれた、
だから今日はお礼で一緒に遊ぼう!」
そう言って笑うとオルは複雑な顔をする。
「・・・大人もお礼ってするの?」
その言葉に今度はヨハネがきょとんとする。
「大人でも、ありがとうって思ったらお礼するし、ごめんねって思ったら謝るヨ。
まぁ・・・人にはよるんだろうけどね。」
そう言いながら時計を見る。
「・・・ありがとぉ。」
「ん?」
顔を上げたヨハネにうつむいたまま、小さい声でオルは言った。
「・・ご飯、ありがとぅ。」
「いぇいぇっ ねぇ、とりあえず宿屋の人には夜まで借りるって言ってあるし
ドワ村案内してくれないかな?アクセ屋さんとか雑貨屋さんとか、
キレーなトコとか、美味しいお店とかっ。」
そう言うとオルは少しだけ笑顔を見せた。
「うん、いいよ。」
「よしっじゃいこっかっ。」
いつの間にか平らげたおかわりの皿を重ねて立ち上がる。



その頃のセイクレッドは。
「あ、ドルフさん?ヨハネス=パブテスマっていいます。
転クエで大地の神マーブルの事勉強してるんだけど。」
あの後、脅しが聞いたのか豊かさと繁栄の神だとか言われたわけだが
イマイチ納得がいかない+なんだか会ってみろとか言われて放浪者ドルフの所に
会いに来たところだった。
「マーブルは豊かさと繁栄の神でありながら同時に貧困と没落も支配している神、
この簡単な真理が何故誰も分からないのだ・・・・。」
そう言うドルフに納得したようにセイクレッドは呟く。
「なるほどね・・・両極、表と裏。・・・さんきゅ、危うくあの詐欺親父のいう事
真に受けて帰るとこだったわ。」
その言葉にドルフは目を輝かせる。
「分かるのか?!」
「誰かが豊かになれば誰かが貧しくなる。考えてみれば当然よね。」
事もなさげに言うセイクレッドはいきなりドルフに手を?まれ眉をしかめる。
「は?」
「お前さんのように聡いお嬢さんは珍しい!全く持って珍しい!
頑張って審査を進めたまえ!このドルフ、陰ながら応援しよう!」
そう言って何かのバッチを渡される。
「それをもってギランの神官プリモンジュに会いたまえ。彼はアインハザードについての
知識と理解がずば抜けて素晴らしい。」
そう言われて苦笑する。
「お嬢さんって年でもないんだけどね・・・まぁありがとう。ところで・・・・。」
そうバッチをしまい、向き直る。
「ドルフさんオルって子知ってる?北の宿屋の子。」
ドワーフ村での用事はこれで終わりだ。あとはうちの盟主のお人よしに付き合ってやらないと。
「オルちゃんかい?知っているが・・・。」
「うちの盟主があの子救いたがってる。私もそれに従うつもり。貴方のその冷静な心眼を信じて
貴方の知恵と知っている情報を分けてもらえないかしら。」
その言葉に目を丸くする。
「救う・・・と?」
「何その目は・・・他人が口出すなとでも言うつもり?」
「そういうわけではないが・・・・簡単な事ではないぞ。恐らく彼女の両親はもう亡くなっておる。」
「根拠は?」
「生きていれば這ってでも化けてでも帰ってきているだろうからな。あの二人はそういう『親』だ。」
その言葉に少し考えてから言葉を続ける。
「私、少し特別な力持ってて死者の・・・つまり幽霊の軌跡辿れるの。その為に何か・・・
そう、彼女と両親とを繋ぐモノが必要なんだけど心当たりないかしら?」
今度はドルフが考える番だった。
「繋ぐものか・・・あったとしても処分されてると考えるのが定石だろう。」
「くっそ・・・結婚指輪とかあの宿にあんなら忍び込んででも取ってこようと思ったのに・・。」
そう舌打ちをして言うと思い出したようにドルフは顔を上げた。
「あるぞ!あの二人の分はなくともオルちゃんの分が!」
「えっどういう事?!」
「二人が式を挙げたのはオルちゃんが生まれた後なんだ。そして指輪は3つ作られた。
この意味は分かるな?」
セイクレッドはにやっと笑って髪をかき上げ、ドルフの目を真っ直ぐ見る。
「もう一つはあの子が持ってるのね。」
「取られてなければだがな。それで繋がるのか?」
そう言うドルフに強くうなずく。
「最高のソウルピースだわ。ありがとう。」
セイクレッドの言葉に今度はドルフがうなずいた。
「あの子を救う・・・か、我々村の者でも諦めていたコトを転クエでふらっと来たお嬢さんが
始めるとはな・・・。こんな事を言える義理ではないが私に出来る事があれば言ってくれ
そして約束してくれ。」
「約束?」
「あの二人の魂を救ってやってくれ・・・神聖生物のお嬢さん。」
その言葉にセイクレッドは固まる。
「・・・いやにあっさり私の話信じると思ったら・・・・。」
「パブテスマの名を持つのは神聖生物の一族のみだからな。」
「っていうか私が思ってるよりうちの名前って有名だったりするわけ?」
そう頭を抑えるセイクレッドで愉快そうに笑う。
「神を信仰するものや研究する者で知らぬ者はいないだろうな。
そうだ・・・これは役に立つか分からないがオルちゃんについてもう一つ教えてやろう。」