エピローグ

「これが僕の知ってる全てです。」

そう言いながら眠る猫はグラスをおいた。

INESSも四期メンバーになりあたしがまだ狩りから戻る前にと話をしていた。

理由は簡単だ。新メンバーの一人があたしのエルバソについて猫にたずねた。

ただ、それだけの事から話す事になったわけだが食堂のそのテーブル一角だけに

重い空気が流れた。

「その後・・・どうなったんですか?」

口を開いた朝っちに目を伏せて猫は答えた。

「僕がヨハネさんを見つけたのがそれから4日後。次の日に約束してたんだけどこなくて。

エルフ村で見かけたって友達に聞いて探しに行ったんです。その時その話を神官さんに聞いて。
ずっと食事も取ってないって言われて部屋に行ったら。」

そこで一息つき。言葉を続ける。

「僕が声をかけるより先にその時持ってたカンジャーナイフ売ったら二刀の鞘って買える

かなって聞かれて。」

「で、猫くんにカンジャー押し付けて鞘買いに行かせてディオンで合流。」

急に後ろから言葉を挟まれて一同はそちらを振り返る。

「その時からあいつは自分の事をボクって言うようになって。あのエルバソを

持ち歩き。そしてピンチの人を見ては彼と重ねて自分省みずつっこむ様になった・・・と。」

振り返った先にいたHMのデーモンを着た女はそう言ってため息をつく。

「一緒にいたときに・・・通りすがりのプロフに『ラザくん?』って声かけた事もあったわね。
まだ最近の話だけど。」

sacredはそう言いながらウォッカの瓶をあおった。

「セイクレッドいつの間に・・・」

クロフォードの問いにわずかに目を向ける。

「まじめな話してたからね。黙って聞いてた。・・・もう5年になるらしいけど

あいつの中じゃまだ終わってない出来事なんだろうね。」

そう乱暴に言い放つ彼女の言葉に数名はうつむき。数名は表情を曇らせていた。

「愛と未練のエルバソなわけね。師匠のあれは。」

そう口にした巖摩にセイクレッドは首を横に振った。

「愛とか恋とかとは別次元の感情だよ。あいつの彼に対する想いは。

そもそもその頃あいつまだ15とかそのくらいだったはずだし。」

「好きな人が死んじゃったのとは違うんですか?」

そうたずねるテイル君にまた首を振る。

「親友。あいつの言う相方の意味は親友だって前に言ってた。だから二度と

誰も相方とは呼ばないって。まぁぶっちゃけ恋愛は別にしてるしな。あいつ。」

その言葉に数名掘り下げようと思ったが全員

『真面目な話してるし止めよう』と思い留まった。

「ヨハネ様・・・そんな過去が・・・。」

そう泣きそうな顔で言う黒猫ちゃんに翼ちゃんも思い出した様に呟いた。

「そういえば・・・僕が血盟入りたいって言った時に姫が戸惑ってたのって・・。」

「彼と同じ職業だから・・・でしょうね。少しの事で重ねてるからあいつ。」

ずっと無口だったいちごしょーとも口を開いた。

「でも この世界は誰がいついなくなっても その覚悟がないと生きていけない。」

その横でヒゲドムもためらいがちに頷く。セイクレッドは少し苦笑した。

「理屈じゃないのさ。というかあいつに常識は通じないしね。」

そのあたりで首をかしげた置いてきぼりのTIAにセイクレッドは流暢なポルトガル語で

事情を説明した。みるみるうちに涙を浮かべたTIAの頭をコツンと叩き。

「よくそんな過去を持ったまま・・・・。」

言葉を途中で切ったKナインにわずかに複雑な表情を見せてから、セイクレッドは

はっきり言い切った。

「あんたらがいるからよ。」

「「え?」」

数名が同時に尋ねた。その様子に笑いながら。セイクレッドははっきり言い放った。

「あいつを今支えてるのはあんたら。護るべきモノがなきゃ生きていけないの。

それは・・・あいつだけじゃないと思うけど?」

そう笑うセイクレッドの言葉に各自が顔を見合わせた時だった。

 バンッ

「ごめん!遅れた!いやーDVCPTで遅くなっちゃって〜ごめんねぇ〜」

話の当人がいつも通りのノー天気な笑いを振りまき入ってきた。

「わw今日はみんな早いねー人数も集まってるし♪クラハン楽しみ・・・・ってどした?」

空気の重さにやっと気づき首を傾げる。それにたまらずセイクレッドは笑い出した。

「まぁ。こうやってこいつが笑ってる理由はわかったかしら?」

そう言うとバタバタと大騒ぎに発展する。

「え?!え?!何何?!」

「ヨハネ様ぁっ」

黒猫ちゃんが抱きつくのと同時に周りの目を考えない連中がぎゃーぎゃーとまとわり着く。

「ヨハさーーーーん」

「仕方ないわねぇ師匠は・・・」

「ヨハネさん好きですよ★」

「BOSS ワタシ ズト INESS 」

「まぁヨハネが好きで集まってる連中だしね。」

「え、どうしたらいいのこれ」

「姫、僕がいますから!」

「ヨハネさん・・・愛してますっ!!」

「まぁ好きじゃなきゃINESSにおらんわなw」
「俺も愛してます☆」

「僕は一緒にいますよ、ずっと。」

「ボーーーチューーーー」

「ヨハネたーん!ぎゅーーーー」

「まぁ・・・30%くらいは好きだけど。」

「なんでそんなにかわいいんでふかっ」

「・・・・・(ここは抱きつくべきなんでしょうか)

「ヨハネさん、愛してるぅ〜〜〜〜〜w」

「思いつめずに楽しみましょう!」

他の客が呆れる中、ぎゃーぎゃーと騒ぐ様子を笑って見ながらセイクレッドは

席を立つ。

「ちょっとまってセイクレッドこれ何?!どういう事?!ぐあっ」

「あっはっは。」

そう言いながら店を出る際、チラッと横目でヨハネのエルバソを見やる。

そして微笑みドアを閉めるとわずかに神聖生物の血を使ってから小声で言った。

「そして・・・この世界であいつの始まりは間違いなく君だった。

その事は誰にも変えられない事実よ。」

そう言って満月を見上げた瞬間。中でまだ騒いでいるヨハネの腰で

誰にも気づかれずにエルバソがわずかに光を放った。