新しい力

「熊さん熊さん・・・・。」

「あ、いたいた、ヨハネさん行き過ぎです。」

「これで最後だな〜。」

途中食事休憩をとり、それでもまだ日は高い時間に最後の試練である

熊狩りをおわした。

「これをパリナの元へもって行くがいい」

そういわれて土の指輪を受け取る。

「ありがとう!」

そうアーススネイクに笑顔を向けると後ろからカムイさんに頭をくしゃくしゃと

なでられる。

「よかったなー。」

「はい!」

「オメデト」

そう言われTIAにも笑顔を向ける。

「ヨハネさんレベルは?もう20になってる?」

そう猫さんに言われ止る。

「・・・あ」

なっていないということを気づいてくれたらしく猫さんはくおんさんと

顔を見合わせうなずく。

「あげちゃいましょう。俺たち手伝いますんで」

「俺も手伝うぞ。」

そうカムイさんも言ってくれた。

「ワタシ ダメ イエ カエリマス」

TIAのその言葉に振り返る。

「ゴハン ジカン」

そううつむき加減に言う彼女にあたしは右手をだした。

「アリガトウ TIA マタ アイマショウ!」

そう言うとまたあの無垢な微笑を浮かべた。そしてあたしの手を握った。

「ハイ マタ!」

そして彼女との再会はずっとずーっと後にはなれど果たす事になる。

 

 

 

 

「つーかれたぁー・・・・」

その後、思ったよりレベルが上がるまでに時間がかかり、結局レベルが上がって

すぐ解散になってひとりでグルーディンまで帰ってきた。

この時間じゃもう神殿も閉まってしまっているしということで

転職は翌日に持ち越しにして宿へとふらふら歩く。

まばらな人通りの夜の街は酒の匂いと食事の匂いが漂っていて

お腹がすいたなーと思いつつ歩く。

・・・と、宿の前に彼の姿が見えた。

入り口の横の壁に寄りかかり時計を見ながらそわそわとしている様子を見て

ほっとした。

「ラザくん!!!」

「!ヨハネちゃ・・・」

あたしの声に気づき、壁から離れた彼に飛びつく。

「うわ;」

「ラザ君!ただいま!」

「あはは、おかえり。ごめんねボク起きなかったみたいだね;」

そう言いながら離れた彼にあたしはバッグからアレを取り出す。

「ラザ君見て。」

そう言いながら出した箱を開ける。

四季の玉の入った小さな箱を。

「あたしがんばったよ!いろんな人に助けてもらってがんばったよ!」

そう興奮しながら言うあたしにきょとんとしながら玉を見て、

そしてあたしの頭をなでた。

「がんばったね おめでとう」

そう微笑んでくれた瞬間、あたしのお腹がなる。

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・むぅ」

「・・・はははっお腹すいちゃったね。ボクもまだなんだ。

早く中入ろう?」

「うん!」

そう彼の手に引かれ宿のレストランへと入る。

「明日は一緒に行くよ。それ渡さないと転職にはならないでしょ?」

「うん!一緒にいこう!ラザ君といるときがいいー」

「・・・てれるね」

「え?」

「ううん、で、何食べる?」

「んーと今日はえびピラフと杏仁豆腐〜!」

 

 

 

 

翌朝、今度はちゃんとおきてくれたラザ君と朝食を済ませてから

神殿へと向かう。大切に持っていった四季の玉を渡すと大神官さんは

営業用スマイルで微笑む。

「転職おめでとう。君もこれからエルブンWIZだ。

エルフ村の方には私の方から連絡をしておこう。」

「ありがとうございます!」

「新しいスキルはそこのマジスターに聞くといい。」

そう言われ、ラザ君を見ると頷かれ、そのままマジスターさんへと寄っていく。

スキルの大まかな説明を聞き、本屋さんへと走る。

「ヨハネちゃんこれもだよ。」

「あ、ありがとー。これで全部かなぁ?」

「だと思う。覚え切れなくても持っていればいいしね。お金足りる?」

「大丈夫―」

数冊の本を抱えお会計を済ませ、また神殿へと走る。

「ユニコーンさんとか呼べるんだぁ♪」

そう言いながら無邪気に喜ぶあたしに微笑み、そして少し遠い目をした。

「そういえばラザ君は転職したの?」

その目に気づかずにたずねたあたしに『あ』という顔をする。

「あー言ってなかったね・・。ボクもう転職済んでるんだよ。というか

これ、転職しないと着れないし・・・」

そう言いながら着ていたマンティコアを引っ張ってみせる。

彼がそれを着始めたのはまだ島にいた頃。一月くらい前のこと。

「・・・全然気づいてなかった・・・・」

「あははは、黙っててごめんね?言ったらヨハネちゃん気にして一緒に狩り行ってくれなくなると思って黙ってたんだ。」

そう少し困ったように笑う彼の言葉に確かにそうかもと思いつつ少し膨れる。

「ごめんごめん。でもさ、これからは一緒に狩り行けるんだし。ね?」

そう言われ、表情を戻す。

 

「えーとアクアスウィールでしょーサモンユニコーンボクサでしょ・・・」

「オーラバーン、とっておいた方がいいよ。絶対必要になるから」

「はーい♪」

結局その日はスキルをとたり試したりで夜になってしまった。

あたしがエルブンWIZになってからの話はまた別の話。

ただ、このとき既に運命の輪は回り始めていたことを

あたしはもちろん彼もまた気づいてはいなかった。