「それじゃちょっと行ってくるけど・・・絶対無理しちゃだめだからね?」

「はーい☆」

「・・・やっぱり一緒に行こうよ。観光がてらさ・・・」

「だっていない間に追いつかないとどんどん離されちゃうじゃん!」

ラザ君がどこかへ買い物に行くというのでその間にソロでがんばってると言う

あたしに一緒に行こうと必死に説得をしていた。

「そうだけど・・・下がってたら困るし・・・。」

「大丈夫だよ!スキルも覚えたし♪心配しないでいってらっしゃーい☆」

腑に落ちない様子で村を出る相方に手を振る。

「さぁてと♪」

軽く伸びをしていそいそと武器を取りに部屋に戻る。

この村に来てすぐに衝動買いしたまだ真新しいナレッジローブに着替えて

部屋を出る。

このグルーディオはグルーディンと違ってたくさんの露天商があり

それほど広くない村の中に色々な建物があって未だによく迷子になる為

相方は南門付近の宿屋をとってくれた。

『見て!白いスカート!やっぱり白がいいね♪』

そう言いながら覗くだけと入った防具屋からちゃっかり着替えて出てきた

あたしに苦笑しながらも『かわいいよ』そう言ってくれて大喜びしたのはまだ二日前の話。

しばらく着ていたマジックパワーローブを売り、武器は未だNのウィザードスタッフなものの見た目だけは一人前な格好で宿を出る。

「露営なら一人でもいけるかなぁ〜」

そう言いながら歌を口ずさみながら走り出す。

途中とおりすがった人にWWをもらいお礼を言ったりしながら露営の東門につく。

まだ早い時間なのもありすいている東門の外でチマチマと狩りを開始する。

Ne bara Rokia・・・riric!」

ひたすらアクアスウィールをうちつつ、魔力が切れては回復。

回復したら狩り。そんな事を続けていると

ふと近くに座ってるおじいちゃんに気づく。

「こんにちわぁ〜」

「おお こんにちは」

ドワーフのおじいちゃんに声をかけると穏やかに返事が返ってきた。

「一人ですか〜?」

「そうじゃよ。おじょうさんも一人かね?」

「うん〜魔力回復したらマイシーいる〜?レベル1だけど〜」

「おお、もらえるなら。」

「うん」

そんな風にいいお天気の下でのんびりと狩りを続ける。

お弁当を持ってきた為村には戻らず一人で(いやいろんな人に声をかけつつ)

気づけば夕暮れで精神力も切れ始めていて最後に一匹マッフムを倒して

グルーディオに戻ろうと思った。・・・が。

Ne bara Rokia・・・うわっ」

詠唱キャンセル。大量リンクに回復薬は残っていなくて思いっきり袋叩き。

露営東門外の隅っこでばったりと倒れてしまった。あたりは暗くなり始めていて

しかもそんな見づらい場所で倒れた為、あたしはしばらく誰にも発見されずに

気を失ったままだった。

 

「う・・・・・」

目が覚めて体を動かそうとしたが、思ったより血を流しすぎていて、そしてその傷の

痛みで体を動かすこともできずにうめいた。

『やっちゃったぁ・・・・・』

そう思いながら今朝のラザ君の言葉を思い出す。

?絶対無茶しちゃだめだからね?

『最後の最後でやっちゃったなぁ・・・』

ぼーっとする意識の中そんな事を思う。

『今何時だろう・・・ラザ君も村に戻ってる時間かな・・・心配してなきゃいいけど・・・。』

そう思って目を空に向ける。高く上った満月が大体の時間を示す。

あたしはかなり長い時間眠っていたということだけはわかった。

『このままだと・・・あたし死んじゃうのかなぁ・・・寝てれば回復するのかなぁ・・』

そんな事を思いつつ色々なことを考える。走馬灯のように・・・とまではいかないが

いろんな事を考える。ラザ君ソバ好きだったなぁーとか、

猫さんキレると性格変わるよなーとか、

さっきのおじいちゃんの名前ダンおじいちゃんって言ってたっけーとか。

そんな事を考えながら、意識が再び遠のき始めた時だった。

A Tallde rizhaha!riric!!」

あの人の声がした。

「あ・・・・」

痛みはまだあれど動くようになった体をゆっくりと向ける。

 バサっ

ぼやけた視線の先の彼はおもむろに上着を脱ぎあたしの下半身にかけて再び目を閉じる。

A tallde rizhana ziephan!」

リザレクションの詠唱からヒールの詠唱へ。

ある程度の回復をさせると近寄ってきた彼は冷や汗を浮かべ、

ただでさえ色白の顔を蒼くしてあたしの顔を覗き込んだ。

「ヨハネちゃん?!大丈夫?!」

そう言ってあたしの首筋に手を当て脈を確認する彼の名前を力なく呼ぶ。

「・・・ラザ君」

すると彼は力が抜けたように座り込んだ。

「よかった・・・・。」

「どうして・・・?」

起き上がろうとすると彼はあたしの体を支えて深くため息をついた。

「ご飯の時間になっても戻ってこないしメモも何もなかったから何かあったかと

思って・・・ヨハネちゃんがいるならこの辺だと思ったし。暗くて

見つけるの少し時間かかったけど。」

そう言いながら汗をぬぐう。

「ごめんね、ありがと。」

そう言うと無事でよかったと微笑みあたしの腕を肩にかけ立ち上がった。

「歩ける?」

「うん、ヒールしてくれたからもう大丈夫。あー服血ついちゃったね;」

「洗えば落ちるからいいよ。」

そう言いながらあたしにかけていた上着を掴む。血って落ちづらいよなぁなどと思いつつ

まだあまりしゃべる体力もなくてゆっくりと歩き出す。

「月。」

「え?」

「満月でよかった。新月だったら見えなくて・・間に合わなかったかもしれない。」

そう言って苦笑する彼にあたしも笑顔を返した。

 

 

 

敗北と届く想い