「見て見てラザ君洞窟があるよ〜〜♪」

「本当だね。」

あたしと彼は狩場を湿地帯に移しディオンの宿を拠点にして狩りをする日々をすごしていた。

あたしが魔法を打ち、後ろから彼が切りつける。そのパターンを繰り返しつつ

時々(というかしょっちゅう)リンクさせちゃったりして迷惑をかけながらも

まったり話をしながら狩りをする日々が続いていた。

あたしのレベルも25くらいになり武器もマナスタッフへのグレードアップして

少しは役に立てるようになったかなと喜びながら。

ギランが買い物が安いということを知ったのもこの頃だ。

そしてこの時期

過去最大の大迷惑をあたしはやらかす事になる。

 

「ラザ君〜朝だよ〜狩りいこ〜」

宿の隣の部屋のドアの叩く。 また返答はない。

「む〜入るよ〜」

中に入るとやっぱりぐっすり寝ている相方の姿。

 ぷに

顔をつっついてみても反応はなし。こうなるとなかなか起きない事は

付き合いの長さもあってよく知っていた。

「よいしょ。」

こういう時の対応ももう慣れたものだった。

『ラザ君へ。湿地帯の東の洞窟あたりにいるから起きたら来てね。』

そうメモに書くとあたしは部屋を出る。

最近は一人でも瀕死の重傷を負うことも少なくなっていたが

一応居場所を書き、一人で宿を出た。

 

「・・・・うん?」

目を覚ました彼は時計を見てまた寝過ごしたと気づきすぐにメモ帳を見る。

「東・・・。珍しいな。いつも西で狩りしてるのに。」

そう言いながら彼も身支度を始める。そう、珍しいと気づいた彼は正しかった。

なぜならその日。あたしはいつも通り西に向かっていたのだから。

 

「ラザくん遅いなぁー。」

そんな事を言いながらジャイアントリーチを狩り続ける。

二人で狩ってる時とは違いMPが切れるのが早い為休憩が多くなるが

足の遅いリーチを狩ってる分には危険もないし。たまにひっかけるホラーも

対処できる範囲だったからのんびりと彼がくるのを待っていた。

その頃、

「んー・・・いないなぁ・・・。」

彼は湿地帯の東の洞窟周辺で絡んでくるホラーをなぎ払いつつあたしを探していた。

そう。西で一人狩りをしているあたしを探していた。

 

 

遅いなぁと全く自分の間違いに気づかずに回復をしている

・・・とふと後ろから声をかけられる。

「貴方一人?」

振り返るとHFの女の人があたしを見ていた。

「はい」

そう笑顔で答えると一緒にいたDEにうなずいてから話始める。

「貴方、血盟って興味ない?」

そう言われきょとんとする。

「けつめい?」

「ええ。クラン。」

あたしは首を傾げる。

「何ですか?それ。」

そうたずねるあたしにその女の人は説明をしてくれた。

「チームみたいなモノでね。仲間が増えるの。人数が多くなれば城を攻めたりもするし。」

そこで暴O族を連想したあたしは激しく間違っているとは思うがなんとなーく理解はした。

「ごめんなさい・・・相方に聞いてみないとちょっと分からないです。

相方と一緒じゃないとだめなんで。」

そう答えると女の人は微笑んだ。

「分かったわ。気が向いたらここに連絡してちょうだい?」

そう言いながら名刺を渡されて微笑返す。

「はい。」

「それじゃまたね。」

そういい残しその人たちは立ち去って行った。

 

「さーてと。」

しゃべってる間に余裕で魔力も回復していて、狩りを再開する。

「それにしても遅いなぁ・・・もう3時になるのに・・・。」

あたしが宿を出たのは8時少し過ぎ。

いくらなんでも遅いとは思いつつラザ君の事だから心配はないと楽観的に考えて

狩りを再開する。

 

その頃。

「おかしいなぁ・・・もう5時間も探してるのにいないなんて・・・・。

どこかで倒れてるとしても見つからないわけないのに・・・。」

そう思いながら彼はまだあたしを探していた。

そう、見つかるわけがないのだ。そしてその事に彼は気づいた。

「・・・・まさか。」

そう呟き彼は西の方角へと走り出した。

あたしが狩りをしている西の洞窟付近へと。

 

「ふーからっぽー。」

魔力を使い切りちょこんと座りこむ。

時間はもう4時をすぎていてわずかに日が傾きかけていた。

「・・・・おかしいなぁ・・・・」

さすがに不安になってきた。その時だった。

「ヨハネちゃん!」

後ろから声がする。

「あーラザ君〜遅かったね〜」

そうのん気に言うとさすがに怒った様子で言われた。

「ヨハネちゃん!ここ西!!!!」

「ほえ?!」

よく考えて見る。確かにここは西だ。そしてあたしがメモに書いてきたのは・・・・

「・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・ごめんなさい・・・・。」

「・・・はぁ。」

多分彼を怒らせたのはこれが最初で最後(だと思う)

その後、少しの間怒っていた彼に謝り倒しなんとか許してもらえたわけだが。

「まさかここまでやるとは・・・。」

そう呆れられ凹み。今度はあたしがため息をつき。二人で宿へと戻る。

「ごめんなさい・・・・。」

あれから数時間たち、食事を済ませて各部屋に戻ったわけだが、まだ凹んでいた

あたしは彼の部屋へと行ってみた。

「え?」

出てきた彼は首を傾げる。

「場所・・・間違って・・・。いっぱい探させちゃって・・・。」

そうしょぼくれるあたしに苦笑し、頭をなでた。

「さすがにあれは・・・ね。でももう怒ってないよ。大丈夫。」

そう言われ不安げに彼を見る。

「本当?」

「うん、でも次は気をつけてね?」

「うん・・・。」

「本当にもう怒ってないから。今日はゆっくり休みな?」

そう言われ素直にうなずく。

「・・・」

そして何かを彼は言いかけたが止めて、微笑んだ。

「おやすみ、ヨハネちゃん。」

「おやすみなさい。」

君との日常