「時間あるしゆっくり行こうかな〜。こっちの方くるの久々だし〜。」

そうつぶやきながらディオから北へ、中立地帯を目指す。

いつもならそこから帰還スクロールで村に飛ぶがのんびりと

直接村まで歩くつもりだった。

エルフ村の景色は、懐かしいという感覚はなく綺麗な場所だとだけ思った。

多分あたしはエルフ村で生まれたわけではないだろう、漠然とそんな気がしていたから。

ただ、ラザ君と何度か訪れるうちに、少しづつではあるが自分の大切な場所の

ひとつになっていたのもまた事実で。

そのときだった。

「?!」

ようやく中立地帯という付近で、一人のエルフの男が真横を駆け抜けた。

「・・・・・・」

立ち止まり、こちらを見て無言のまま弓を握るエルフ。

ただ、そのエルフの顔が誰かに似ている気がして凝視してしまう。

「・・・貴方どこかで会ったこと・・・・」

そう言いかけるとこちらの言葉が終わる前に走り出してしまった。

 

「・・・誰かに似てる気がしたけど・・・気のせいかな・・・。」

 

そう全ては 運命を伝えようとしていた。

気づくこともできたはずなのに

あたしは何も気づかないまま

何もできないままで

最悪の形の未来を

選び取る事になる。

 

 

「到着〜!」

夕暮れにはまだ少し早い時間に着き、ついでに神殿に挨拶に行く。

島の神殿ほど馴染みがないにしろ、島育ちの珍しいエルフとして

顔と名前だけは覚えられていた。そうやって時間をつぶし、

日が傾き始めた頃。あたしは待ち合わせの場所の階段に腰掛けた。

エルフ村の南門の前にあるアーチ。

エルフ村に来るたび彼と座っていろいろな話をした場所。

その場所であたしは、彼を待っていた。

 カラン・・・・

と、突然左耳のイアリングの留め具がはずれ、地面に落ちた。

「あれぇ・・・縁起でもないな・・・。ラザ君にもらったのが壊れるなんて・・・」

そう言いながら後で直そうとバッグにしまいこむ。

「何かあったのかな・・・まだ時間には早いけど・・・。」

そう思い、顔を上げ、門の方に目を向けた時だった。

 

『あの日君に逢えたから』