「むぅ〜むむー・・・・・」

村のモニュメント前で足をバタバタしながらふくれる。

ここ最近、遊んでくれないラザ君と久々の待ち合わせをしていたが

待ち合わせの時間からもう30分過ぎている。

いつもなら時間より前にどちらもきてるのがパターン
(
しかも大体ラザくんが先にいる)
なのに。 

「は!もしかして何かあったとか?!」

そう思い立ち上がる。とりあえず彼のいつも泊まってる宿屋に駆け込んで
聞いてみると

「ラザくんかい?昨日はうちには泊まってないよ?」

宿屋のおばちゃんに言われΣ( ̄Д ̄|||という顔をするとおばちゃんは困ったように

「もしかして本土の方に行ってるんじゃないかい?あの子は最近島にいないだろう?」

といわれる。

『・・・そうなのかな・・・何も言ってなかったと思うけど・・・・』

そうとぼとぼ歩きだしたが、やっぱりモニュメント前には彼の姿はない。

「みゅぅ・・・・」

待ち合わせ時間からもう少しで1時間になる。

「・・・・・」

とりあえず走りだしてみる。のろまな足で走りだしてすぐだった。

「うわぁっ」

「ぶっ」

何かにぶつかり後ろに転ぶ。ぶつかる直前青い光が見えた。帰還スクロールの魔方陣。

誰かが帰還スクロールで戻ってきたところに突っ込んじゃったらしい。

「うきゅぅ〜〜〜〜」

思いっきりぶつけた顔をさすってると相手が手を出した。顔を上げるとそこには汗だくの

彼がいた。

「ごめん;船が遅れてたから海の中走ってきたんだ。かなり遅くなっちゃったね:」

「ら〜〜〜ざ〜〜〜〜く〜〜〜ん〜〜〜〜〜〜〜〜」

半べそで言うあたしから何か気づいた様に目をそらす。

「ヨハネちゃんスカート:::」

「Σ( ̄□ ̄;)

ラザ君の手に捕まり慌てて立ち上がる。

 

「あ・・・」

「ん?」

「ラザ君その服・・・・」

今まであたしと同じデボーションを着ていたはずのラザ君。それが今、目の前にいる彼は

オレンジ色の服を着ている。

「あぁ、うん、本土で買ってきたんだ。どうかな。」

そういうラザ君にあたしは思わず言ってしまった。

「・・・・男の子なのにスカートはいてる・・・・」

そういうと照れ笑いをしていたラザ君がぴたっと止まる。

「・・・変かな?」

「・・・似合ってるけどスカート・・・・。女の子みたい・・・・。」

「・・・・そうかな・・・・」

「うん・・・・でも似合ってるよ?あたしよりかわいいくらい。」

まさかこの正直な感想が・・・のちのちまで彼が気にする事になるとは・・・。

 

「ヨハネちゃんまだ本土行かないの?」

この質問はもう何度目になるんだろう。当時あたしはLv1.。正直毒蜘蛛の相手が

多少楽すぎて飽きてきた頃だった。

「ぇーだって怖いよ?」

要塞の中で2人で狩りをしながら答える。この当時は全く気づいていなかったけれど

いつの間にか転職を済ませていたラザ君の、補助魔法のおかげで

さくさくと狩りができていた。

「そうでもないんだよ?ヨハネちゃんくらいの強さのモンスターもいるし

儲かる仕事もいっぱいあるし・・・。」

「うーみゅ・・・・」

そう煮え切らない返事をしたあたしにまた彼は苦笑する。

「そんなに怖がらなくても大丈夫だよ。ボクもいるんだし。」

「むーにゅ・・・・」

「少し、考えてみて?」

そう言われて、素直に返事をした。

 

それから数日間、ラザ君は島にいてくれたから毎日一緒に狩りに出かけた。

一緒に要塞に向かう途中で追ってきたウェアウルフチーフから落ちた

キャッツアイイアリングをめぐって半ば強引に無理やりつけられて

「はい。これでヨハネちゃんのものだね。似合うよ?」

などと言われて苦笑したり。

ただ、彼が島に戻ってきたときの服はその後一度も着てくることはなかったのが
少し気にかかり、4日後、ふと彼に聞いてみた。

「ねぇねぇラザ君ラザ君。」

「ん?」

補助魔法の詠唱を止め、振り返る。

「どうして服デボーションに戻しちゃったの?」

そう言うと固まってからぼそぼそといい始める。

「いや持ってるんだよ?ほら。」

そう言いながらバッグを開けて見せてくれる。

確かに中にはオレンジ色のあの服が入っていた。

「・・・・?」

「こっちの方が防御高いんだけどね。」

「じゃなんで着ないの?」

そう素直に聞くと言葉を詰まらせる。

「だって・・・・ヨハネちゃんが女の子みたいとか言うから・・・・。」

「え・・・・。」

「スカートスカートとか言うし・・・。」

・・・・・・・あたしのせいかΣ( ̄Д ̄|||

「えええ?!だからデボーション着てたの??」

「うん。一人の時だけこっち着てて、ヨハネちゃんと狩り行くときはデボーション

着てたんだよ。」

そう言って困ったような顔を向けられる。

あたしはどうしよたらいいか分からずとにかく謝るしかできなかった。

「ごめんなさい・・・。」

「え、いや謝ることじゃないんだけどね。ヨハネちゃんがスカートはいてるボクと歩くの

嫌かなーって思っただけだから。」

そう慌てて手を左右に振る。そこであたしはまた一言多い事を言ってしまった。

「平気だよ!似合ってるし!全然普通だし嫌じゃないよ?」

またラザ君が固まる。

「・・・・」

「・・・・・・?」

「まぁ・・・嫌じゃないならいいか・・・。」

「え?」

聞き返したあたしに苦笑を向ける。

「ヨハネちゃんらしいかな?でも。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

旅立ちまであと少し